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佐賀新聞、新卒採用で入社準備金30万円 若者支援を目的に

 佐賀新聞社は今年(2017年4月入社)の新卒採用で、採用内定者に入社準備金として30万円を支給する。優秀な人材を確保したいIT業界や、製造業や看護・介護職など人材不足が叫ばれる業界などでは企業側から採用時に支度金が支払われたり、転職情報サイトを通じて採用が決まった場合に転職祝い金が出る例があるが、新聞業界で新入社員に入社準備金が支払われる例は珍しいのではないだろうか。

[採用ページ]⇒社員募集要項 - 佐賀新聞社
リクナビ]⇒株式会社佐賀新聞社の採用情報|リクナビ2017
マイナビ]⇒(株)佐賀新聞社 | 採用データ | マイナビ2017

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 中尾社長自らが登場した告知広告は佐賀新聞の紙面に掲載された。その中で、入社準備金と合わせて「年齢・学歴不問」であることも同時にアピール。大卒や高卒が条件ではなく、義務教育を終了していれば応募資格がある。新卒社員については大卒を条件にし、年齢も一定の範囲で区切っている新聞社が多い中、こちらの「年齢・学歴不問」も珍しいといえるだろう。

 非常に興味深い取り組みだったので、佐賀新聞でこの募集広告を実際に作られた方にいくつか質問をしてみた。

 Q.いつから、どのような経緯でこのような制度ができたのか?
 A.今年からの取り組み。労働組合からの要求により実現した。


 Q.組合要求の背景について教えてほしい。
 A.早期離職や応募者数の減少など、労使ともに若者の獲得および定着は懸案と考えていた。他社の事例を参考に、若者支援の意味で、入社にあたっての引っ越しや、奨学金返済の一助となるよう、まとまった額が必要との要求を行った。


 Q.中尾社長が募集広告に登場した理由は?
 A.社長が社内で一番若年者対策に気を揉んでいた。今までにない募集広告を作れとのことで、「このように社長をいじっても大丈夫」という社の柔らかさを表現した。ギャルが登場するバージョンも作ったが、ギャルが佐賀にはあまりいないという事で却下となった(笑)

 通常、組合の要求は今の組合員のみを対象に賃上げや賞与の増額などを求めることが多いが、佐賀新聞組合の要求はこれから一緒になる未来の仲間のための要求であり、従来の訴えを超えて響くものがある。奨学金返済が社会問題化している中、若者支援という意義も大きい。どの企業も「若者を大事にする」と口にするが、それが口先だけでなく、このように実際のカタチなっていることの説得力は大きいものがある。
 
 採用スケジュールは5月2日から5月24日までに書類を提出し、書類選考の結果を6月初旬に通知。1次・2次試験を経て、7月上旬に内々定が出る。待遇を見ると年間休日数は98日(有給休暇など除く)とやや少なめだが、遠隔地の出身者には5年間家賃補助も出る。まだ書類提出締め切りまで1週間あるので、興味を持った方は応募してみてはいかがだろうか。

 なお、佐賀新聞は記者職、営業職などの職種別に募集をしておらず、配属先は入社後に決まるようだ。求める人材として「佐賀・地方に愛着を抱く一方、会社だけではなく地域の発展にも情熱を注げる人」があり、それはどの職種であっても共通の理念だろう。あえて職種別にしないことで、記者・営業・管理・技術などの社内の垣根を低くしようとしているのかもしれない。