edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

著作権侵害で「無断引用」は誤用、記事見出しに指摘

 ⇒弁護士は「無断引用」という用語を使っていない - Copy & Copyright Diary
 今日の昼頃流れたNHKのニュースで、たまたま「無断引用で著作権侵害」というテロップを見かけておかしいなあ、と思ったところ、同じように思われた方がいたようだ。
 ニュースの内容は名古屋の弁護士ら5人が、「行列のできる法律相談所」などのテレビ出演などで知られる石丸幸人弁護士に対し、過去に出版した消費者金融などからの借金返済をめぐる過払い金返還の請求方法を解説した本の内容を勝手にパクられたとして、著作権侵害による損害賠償を訴えたというもの。「絶対に訴えてやる!」という番組に出演している弁護士が訴えられたというニュースなのだが、そこで記事の見出しや本文に「無断引用」という誤用をしているマスコミがいくつかあった。
 著作権法の32条では「引用」は「公表された著作物は、引用して利用することができる。」と規定されている。その際特に著作権者に断る必要はない。ただし、条文には続いて「この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。」と記述されており、一定の条件を満たす必要がある。逆に言えば、「公正な慣行に合致」し「引用の目的上正当な範囲内」という条件を満たせば誰でも断りなく「引用」することはできる。つまり「引用」を「無断」で行うことは当たり前のことである。
 このニュースについて、毎日.jpは以下のように報道。 

名古屋消費者信用問題研究会の弁護士5人が25日、「同研究会の著作物の内容が無断で引用され、著作権を侵害された」として、石丸弁護士と同事務所に約630万円の損害賠償と謝罪広告の掲載などを求める訴えを名古屋地裁に起こした。
社会 - 毎日jp(毎日新聞)

 共同通信は47NEWSで以下のように報道。

 消費者金融問題に関する著書の内容を無断引用され著作権を侵害されたとして、名古屋市の弁護士ら5人が25日、テレビ出演などで知られる石丸幸人弁護士と代表を務める「アディーレ法律事務所」(東京)に、約630万円の損害賠償と石丸弁護士が執筆した本の販売禁止などを求め、名古屋地裁に提訴した。
石丸幸人弁護士に賠償請求 「無断引用で著作権侵害」 - 47NEWS(よんななニュース)

 MSN産経は共同通信を丸写し。
ページが見つかりません - MSN産経ニュース
id:copyrightさんの該当エントリでは、訴えを起こした弁護士らのウェブサイトや訴状などから、原告側は「無断引用」という言葉を使っておらず、共同通信と毎日新聞の誤用であることを指摘している。そりゃ、著作権法侵害で訴える弁護士が「無断引用」なんて意味のない言葉を使う訳がないよね、
 なお朝日新聞、時事通信、中日新聞のウェブサイトの見出しおよび記事では無断引用という言葉は使われていない。
朝日新聞デジタル:どんなコンテンツをお探しですか?
時事ドットコム
中日新聞:ページが見つかりませんでした(CHUNICHI Web)
 内容を真似された、パクられた、ということを記事で表現したいなら、単純に「盗用」や「無断で利用」じゃいけないのだろうか。なんで「引用」という著作権法で定義された言葉を使ったんだろう?