edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

朝日新聞、16年4月目標に編集部門を一部分社化 校閲・デザインなど対象か

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1月8日に朝日新聞東京本社管内の販売店の新年総会が開かれ、ASA(朝日新聞販売店)所長や朝日新聞社幹部など1,400人が出席した。「吉田証言」「吉田調書」「池上コラム不掲載問題」といった昨年の一連の問題を受けて、飯田真也会長は「二度と昨年のような過ちを犯さないことを約束する」と述べ、渡辺雅隆社長は「再生への道を着実に歩んでいく」と販売現場に向けあらためて決意を表明した。

 その中、渡辺社長のあいさつの中で、編集部門の分社化について触れた部分があった。

 国内の新聞販売部数は年に数%の割合で落ちている。朝日新聞も例外ではない。ニュースへの接触の仕方が変わり、新聞離れが進む中で、部数減に歯止めをかけるのは容易なことではないだろう。商品力を高めて部数減の改善に努力するが、厳しい現実を直視し、受け入れなければならない。あらゆる部門の無駄をそぎ、力を高めていく必要がある。(中略)
 最大の要因を抱える編集部門では、一連の問題で準備が遅れていた編集新社について、16年4月に設立することを目指し、作業を進める。これと合わせて、地域面などの紙面編集や校閲、写真、デザインの新しいあり方を考える。
(2015年1月23日付新聞之新聞より)

 本社の構造改革の一環として、16年4月と具体的な時期を示し編集部門で新会社を設立する方針であることを公表している。一連の問題で、読者と直接向き合い苦境に立つ販売現場を前に、本社としても身を切る姿勢をアピールする狙いもあったのではないだろうか。

 業界紙の新年インタビューにも、同じような内容に触れた部分もあったので関係部分を引用する。こちらは「選択肢の一つ」というやや弱めのトーンながら、「校閲、デザイン」と具体的に部署名を示し、社外から業務を請け負うことにまで触れていることが目を引く。

構造改革に関連しますが、編集部門の別会社構想や、ホールディングス化の報道が一部でありましたが、あり得るのですか?
渡辺 ホールディングス化は、秋山耿太郎元社長時代から検討していますが、いますぐとりかかることはありません。編集部門の別会社化は、選択肢の一つです。構造改革の中でも編集部門の別会社化は大きなテーマで、組合には一つの方向性として話しています。
― 大きな仕事になりそうですね。
渡辺 別会社になったとしても、やる仕事は同じなので、むしろ可能性が広がる部分もある。弊社の校閲、デザイン部門は優秀なので、外から仕事を得ることだって可能です。だからきちんと説明すれば、理解は得られると思います。
(2015年1月3日付新聞情報より)

 編集新会社の構想については、すでに昨年、木村前社長の新年あいさつでも示されていた。社外の優れた人材を専門記者として機動的に活用できるようにしたり、高齢者の雇用や短時間勤務者の職域としての活用も視野に入れたものであることが語られていた。本来であればもう少し早く進めるつもりだったが、昨年はとてもそんなことが進められる状態ではなかったのだろう。今年の渡辺社長の発言で、校閲や写真、デザインといった専門性の高さゆえジョブローテーションに適さない部署の人員については、本社とは別の賃金体系を用意するという狙いが明らかになってきたように感じる。

 他社でも産経新聞は2013年10月に整理・校閲部門を一部分社化した。読売も地域面の編集(整理)および校閲については子会社で募集していたりする。

[参考]⇒読売新聞地域面編集者の募集について|株式会社読売プラス

 朝日新聞の2014年12月の朝刊販売部数は680万9049部と700万部を大きく下回り、年初と比較して80万部以上の減少となった。深刻な部数減の状況下では、人件費に手をつけざるを得ない事情もある。新聞社の中枢である編集部門も聖域ではないということなのだろう。

同時に紙の新聞だけを作っていた時代が過ぎ、様々な業務が生まれた。働き方も多様になる中、全ての社員を一律の制度・待遇で雇用することに限界が来ているのかもしれない。新会社に属することで、転勤の心配がなくなったり、より専門性を追求できたり、朝日以外の仕事に積極的に関われるようになる可能性もある。単純な人件費削減を目的にするのではなく、より多様な働き方や柔軟な人材登用を可能にする制度になることを期待したい。