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国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

日経、毎日も新幹線50年でウェブ特別企画 ビジュアル特集が各社で揃う

 10月1日に開業50年を迎えた東海道新幹線。8月に先行してウェブ特集「新幹線の半世紀」を公開した読売新聞に続き、日本経済新聞毎日新聞も同じテーマの動きのあるビジュアルや動きを活用したウェブ企画を公開した。

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↑「時間地図」のアニメーションをキャプチャした動画

 日本経済新聞は9月29日に「日本を変えた新幹線〜ビジュアルで振り返る半世紀」を電子版で公開。第1章「縮んだ列島」では、鉄道網の普及で東京を中心とする所要時間がどう縮まったかを視覚化。新幹線の影響が大きい地域間ほど距離が短くなる「時間地図」を、1964年の開業から2014年まで、鉄道の高速化によって日本列島がどのように「狭く」なっていったかをアニメーションで表現している。また、「機能とデザイン」の章では東海道・山陽新幹線をはじめ上越・東北・長野・九州・秋田・山形といった歴代の新幹線の移り変わりを、イラストと写真を大きく組み合わせて表示している。また、経済紙らしく、新幹線の乗客数と日本のGDPを重ねあわせたインタラクティブなグラフも掲載している。

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 毎日新聞は9月30日に、ウェブ特集「戦後70年」の1コーナーとして「Since1945 新幹線と交通 日本を変えた夢の超特急」と「ビジュアル年表 新幹線と交通」を公開。前者は5回構成の第1回で、新幹線が開業した1964年10月1日の開業式典の様子やビュッフェの混雑ぶりの紹介に始まり、オリンピックの開催など日本の転換点となった60年代の世相・風俗を振り返るインタビュー記事、人口減少社会を迎えるにあたり、新幹線はどこまで延伸すべきかといった識者提言などが盛り込まれている。後者のビジュアル年表は、毎日新聞社の保有するアーカイブから写真で綴る交通の戦後史と言えるもの。1950年代から2014年、そして未来を見越した写真までを網羅した内容となっており、交通を切り口にした「戦後70年」を語るのにふさわしい内容だ。ちなみに「戦後70年」には、以前ブログで紹介した「データで見る太平洋戦争」といった企画なども並んでいる。

 いずれもウェブブラウザのスクロールに合わせてテキストや写真、動画などが表示される「パララックス(視差効果)」という表現技法を用いたもので、パソコンだけでなくスマートフォンタブレットでの閲覧を想定していることも共通。各社視点はそれぞれ異なるものの、ちょうど同じ時期に、読売・日経・毎日の3社が同じ「新幹線開業50年」を題材にしてコンテンツを制作したということは興味深い現象である。ちなみにNHKも「疾走50年 新幹線が時代を変えた」というコンテンツを制作している。ウェブ表現技法のトレンドと、誰の心にも響くイベントがベストマッチしたということなのだろう。

 なぜ新聞社がこういったコンテンツに取り組むかについては、実際に制作にあたった毎日新聞デジタル報道センターの尾村洋介記者が意義を説明している。ダイナミックなページ構成を通して、スラッと最後まで読めて、関心を持った人にはじっくり「二度読み」してもらえるようなコンテンツを目指したとのこと。

 新聞紙面は「一面横トッパン見出し」など、ニュースの軽重に対する価値判断を含む紙面構成で大きなインパクトを打ち出せるが、通常のニュースサイトでは、記事の差別化は難しい。パララックスは、こうしたウェブの弱点を意識しつつ、動きやマルチメディアなどの特長を加えて、ニュースの見せ方を魅力的にしようという試みだ。
Login:「パララックス」活用の狙い /東京 - 毎日新聞

 
 地方紙でも神戸新聞が同様な技法を用いて阪神・淡路大震災20年を前に特集ページを一新している。記事、写真、動画、アニメーション、インタラクティブコンテンツなど、ウェブ上の様々な表現技法を用いてニュースの見せ方をより魅力的にしていこうという取り組みはこれからも広まっていくだろう。単に記事や写真を撮り、レイアウトは整理部にお任せという時代は終わり、これからはデジタルでどう見せるかということが、今後は記者にも求められていくのではないだろうか。