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国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

毎日新聞、戦後70年ウェブ特集で「データで見る太平洋戦争」「ビジュアル年表」を公開

 1945年8月15日。多くの尊い命が犠牲になった太平洋戦争の終結から、来年2015年でちょうど70年の節目を迎えます。毎日新聞は、そうした戦争の歴史を振り返るとともに、戦後の復興の歩みをたどる特集「戦後70年」を始めます。

 戦争の歴史については大きな柱は二つ。「原爆」「玉砕」「特攻」「沖縄」など、戦争体験者の尊い証言を紹介する「千の証言」と、統計データをもとに戦争の実相に迫る「数字は証言する」。戦後日本の歩みは「since1945」としてグラフィックをふんだんに使って紹介します。
戦後70年 - 毎日新聞

 69回目の終戦記念日を迎えた本日、毎日新聞は戦後70年を迎える来年2015年に向け、特集「戦後70年」を毎日新聞のウェブサイトに開設した。来年8月まで大型の企画が予定されている。
 
 ウェブ独自のコンテンツとして目を引いたのが、「数字は証言する データで見る太平洋戦争」と「ビジュアル年表 太平洋戦争」の2つ。いずれもウェブブラウザのスクロールに合わせてテキストとグラフィックが連動して表示される手法(パララックス)を利用し、テキスト・写真・グラフィックと動きを組み合わせた表現で読者に訴えかけている。

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 前者の「数字は証言する データで見る太平洋戦争」は、5回にわたって連載される予定。第1回では、日中戦争から太平洋戦争までの戦没者230万人のうち、6割が直接戦闘以外で亡くなった「餓死、戦病死」とする研究から、旧日本軍が「作戦の遂行」を最重要課題とし、兵站や休養、衛生を軽視したことを強く批判する内容となっている。どの戦線で何人が死亡したのかの一覧や、深刻な戦力不足のため年を追うごとに民間人の徴用数が増えていった数字をグラフで見ることができる。

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 後者の「ビジュアル年表 太平洋戦争」では、戦争の記憶を風化させないことを目的に、戦争当時の「東京日日新聞」「大阪毎日新聞」(ともに現「毎日新聞」)の紙面と、空襲などで焼けないで残った毎日新聞が所有している戦時中の写真を組み合わせ、1941年から1945年までの年別に太平洋戦争の歴史たどることができる。宣戦布告から香港・シンガポール陥落の進撃、ミッドウェー海戦の敗北の隠蔽、敗色濃厚を隠しきれなくなったサイパン島失陥、東京大空襲といった局面を、紙面でどう報道してきたかじっくりと読めるコンテンツとなっている。

 前者については文章による解説中心で、グラフィックは補足的な使われ方にとどまり、インフォグラフィックとして少し物足りない。「戦没者の6割が戦闘以外で死亡」という研究結果のインパクトは強いものがあるので、特に餓死・戦病死が多かったとされるインパール戦、ガダルカナル島のグラフをもう少し全面に出し、ビジュアル的なインパクトを狙っても良かったのではないか。

 ニューヨーク・タイムズが「Snow Fall」で先駆け、日本でも朝日新聞が「瀬戸内国際芸術祭2013」「浅田真央 ラストダンス」などで先鞭をつけたインタラクティブ報道だが、毎日新聞も積極的に取り入れるようになってきた。ちなみに日経も7月に「福島第1原発 汚染水との闘い」というコンテンツを公開。福島第1原発の現状を、文章とグラフィック、動きを組み合わせたコンテンツを電子版で公開している。

 こういった表現手法を用いるには、従来の新聞制作に関する技術とは異なるCSSJavascriptといったHTMLコーディング分野のスキルが必要不可欠。毎日、朝日、日経でこの種のコンテンツが出始めたということは、新聞社内でもそういったスキルを持った人材を受け入れ、社内で育ちつつあるということなのだろう。