edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

朝日・赤田記者がニコ生「生き残るのはどっちだ?」出演の感想語る

 先日メモした朝日新聞デジタルの会員数についての話題には多くの反応があったが、ちょうどそれを書いていた日(9/22)、ニコニコ生放送で「朝日新聞ニコニコ動画、生き残るのはどっちだ?」という番組が放送されていた。

 朝日新聞の記者とニコニコ動画を運営するニワンゴの社長が対談するという企画で、午後9時半から午前0時ごろまで生放送されていたとのこと。朝日新聞デジタルに無料公開記事として、出演した赤田康和記者のレポートが掲載されている。アンチ朝日ユーザーも多いと思われるニコ生にわざわざ出演することについては本人も最初から覚悟していたようだが、それでも視聴者からの厳しいコメントに立ち向かうためかなりのエネルギーを費やしていたようだ。また、突然放送時間が1時間延長になるなど、アウェー試合に戸惑っていた様子。
[該当記事]⇒http://digital.asahi.com/articles/TKY201110020193.html
 個人的に最も考えさせられたところは以下の点。不正を暴くための取材にはどうしてもコストがかかる、という赤田記者の発言に対し、ニワンゴ社長の杉本氏が、「情報そのものがお金を払う価値があるかどうかが問われている。コストがかかるから有料じゃないと困る、というのは発信者側の理屈であって、理にかなっていない」と言ったことに対する後追いのコメント。生放送ではとっさに考えをまとめて反論というのが難しいこともあるのだろう。

 今更ながら、一言付け加えると、「情報の価値が市場原理だけではかられるようになって本当によいのですか」とは思う。ものごとの真実というのは、きわめて複雑でわかりにくいもの。人々の単純な関心度だけで情報の価値がはかられる社会になったときに、分かりにくいけれども重要な真実は、きちんと暴かれ、情報の取引市場に提供されていくのだろうか。単純化された情報ばかりが駆け巡る社会は、権力を握るひとにとって都合のよい社会ではないか、とも思う。
http://digital.asahi.com/articles/TKY201110020193.html

 「ヤフーニュースではコソボは独立しなかった」という言葉があるように、ただ単にユーザーの関心度順でニュースを並べただけでは芸能とスポーツで埋め尽くされてしまう。それが果たして社会にとって良いことなのかと言われれば、そうではないだろう。まあニコニコ動画からすれば本業の収益源は別であり、コストをかけたニュースをわざわざしなくてもよい、ということかもしれない。
 放送当初での「朝日新聞ニコニコ動画、どっちが生き残るのか」というアンケートに、「朝日新聞」と答えた人は5.4%、「ニコニコ動画」と答えた人が40.8%と圧倒的だったのが、番組最後では「朝日新聞」と答えた人は9.5%まで増え、「ニコニコ動画」と答えた人は39.0%となった。朝日と答えた人が倍近くになったわけで、赤田記者もわざわざ出演した甲斐があったというものだろう。半数以上の人は「どちらでもない/わからない」と返答しているわけで、現時点でのユーザーは「どちらも残る」と思っているのではないだろうか。
 皮肉なことは、この記事が「無料記事」として一般に公開されていること。もちろん多くの人に読まれるためには無料で公開したほうが良いに決まっている。が、「取材コスト」についてはどう考えるか。日経電子版では、発表モノなどのストレートニュースは無料、独自記事や解説は前文のみ(全文は有料)という基準が設けられているようだが、なんとなく朝日新聞デジタルは有料と無料の間でふらついているように映る。