edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

人はなぜネットを使うか「ウェブで儲ける人と損する人の法則」

 久しぶりに読書感想。名著「ウェブはバカと暇人のもの」の中川淳一郎氏による続編にあたる本。前著は実も蓋もないウェブサイト運営でのビジネスの現実を自嘲気味に述べていたのに対し、今回はもう少し「ネットを活用すれば、やり方によってはいいこともあるよ」というアドバイスに寄った書き方となっている。

ウェブで儲ける人と損する人の法則

ウェブで儲ける人と損する人の法則


 「人はなぜネットを使うか」という問いに対し著者の視点は明快で、「人は面白いものをクリックする」「面白いものを他人に広める」「自分にとって便利な情報、得する情報を収集する」の3点に尽きると説明する。そして、人間の時間は有限である以上、クリックできる回数も有限であり、ネットで好まれるコンテンツを出さない限りいつまでたったも人は集まらない。
 「読者に見せたいものより、読者が見たいものや得するものを」という方針は、自分がネットを使う行動原理を考えれば至極もっともなことである。ネットで買い物をするのは便利で安いからであり、ネットでニュースを見るのは無料でいつでもどこでも見られるからであり、面白いページを友人に教えるのはそれを話題にして盛り上がりたいからである。
 だからこそ「自分たちが出したい/見せたい情報」ではなく、どんな情報であれば人が飛びつくのか、どういう風に仕掛ければネットで盛り上がるのかを考えることが重要と説く。
 後半では多くの雑誌を抱える小学館のウェブ戦略について述べられている。そこで書かれているのは、(1)ニュースサイトを立ち上げる(2)ネット文脈に合った内容に再構成する(3)記事を大手ポータルサイトに配信しアクセスを稼ぐ(4)過去の記事を蓄積し、ヤフートピックスなどからのリンクを待つ、というもの。その戦略に基づいてできたのが「NEWSポストセブン」というサイトのようだ。
 意識しなければ1時間くらいでさらっと読めてしまう本だが、各項目をそれぞれつぶさに読んでいくと非常に読み応えがある。ネットでウケる記事のジャンルや見出しのつけ方、ページビューの効率的な稼ぎ方といった細かいテクニックも満載。ウェブサイトの運営や編集に関わったことがある人ほど同意できる項目が多いはずだ。ネットを使って「何か」やらなければならない人たちにとっては、課題図書の一冊とも言えるのではないだろうか。