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国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

アメリカの調査報道サイトは既存マスコミと連携し存在感PR

 「ルポ 米国発ブログ革命」で描かれたアメリカのジャーナリズム変革の現状を、読売新聞の佐々木記者がレポートしている。
 公権力の監視、不正の追及などを、営利企業ではないNPOが中心となり、ウェブ上の「調査報道サイト」活動が活発になっているとのこと。

 【ニューヨーク=佐々木良寿】新聞業界の苦境が続く米国で、公権力の不正などを追及する調査報道専門ネットサイトの活動が活発化している。
 収益に縛られない非営利組織が主体となり、人員削減により手薄となった新聞など伝統的メディアを補完し、米ジャーナリズムを支える柱として定着するか、注目されている。(中略)
 調査報道サイトの当面の課題は、知名度と影響力をいかにして高めるかだ。株主はいなくても、資金のよりどころである財団などには社会への貢献度をアピールする必要がある。多くの非営利サイトに資金を提供するナイト財団のマーク・フェスト副理事長は「どのメディア形態が市民への情報供給という点で持続可能なものかを見極めている」と話し、資金提供が続くかは、各サイトの活躍次第との立場だ。
 調査報道サイトでは編集人員32人と最大規模の「プロパブリカ」(ニューヨーク)は、ロサンゼルス・タイムズ紙との共同取材で、認定制度の不備が原因で悪質看護師が野放しになっているカリフォルニア州の実態を暴くなど、主要紙を中心に「共闘」を進める戦略だ。
 ニューヨーク・タイムズ紙で調査報道班を率いた経験もあるプロパブリカのスティーブン・エンゲルバーグ編集長(51)は、「影響力の点ではまだ、主要紙などには及ばない。テーマによって、最も影響力を発揮できる共闘相手を探す」と、新聞など伝統的メディアとの連携で社会への浸透を目指す考えを示す。
お知らせ : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 調査報道サイトが自身の知名度、影響力を高めるために、既存大手新聞などの伝統メディアと共闘している姿というのは、地域の住民にとって必要な「報道の自由」を継続させていくための一つの案かもしれない。寄付文化が根付いているアメリカならではの話だが「活動資金を提供する財団などへのアピールのために、サイトの知名度や影響力、社会への貢献度を高めていく必要がある」という調査報道サイト側の視点は非常に興味深い。
 日本ではマスコミのリストラ、倒産といった話はまだ深刻な域に達してはおらず(産経が早期退職制度を導入したり、各社ボーナスや給与カットが話題になる程度)、首切りといった人員削減は最後の最後まで行われないだろうが、アメリカではつい先日もアリゾナの地方紙East Valley Tribuneが「ひとつの時代が終わった」と言い残し廃刊を宣言したように、倒産や首切りなどによって職を失う記者も増えてくるだろう。
 しかし、こういった地域の調査報道サイトが根付いていけば、既存マスメディアで経験を積んだ記者の受け皿となり、調査報道サイトにとっても貴重な戦力になりえるのかもしれない。