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TV番組での時事解説を文字起こし BSジャパンと日経電子版が連動

 テレビ東京系のBS放送局であるBSジャパンが平日午後10時から放送するニュース解説番組「日経プラス10」。メーンキャスターは長年テレビ東京の看板番組であるWBSでキャスターを務めた小谷真生子さんだ。番組内の「ニュース+10」コーナーでは電子版からきょうの主要ニュース10本を取り上げたり、「フカヨミ+」コーナーでは日経の論説委員や編集委員がさらに深堀りして解説するなど、日経電子版も構成に大きく関わる報道番組となっている。

 その「フカヨミ+」のコーナーで、12月から論説委員や編集委員による時事ニュースの解説を、週1本文字起こしして日経電子版に掲載する取り組みが始まった。

日経プラス10「フカヨミ」 :特集 :日本経済新聞
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 第1回は12月1日の放送分を12月7日に掲載した。「COP21開幕 温暖化防止へ合意なるか?」というテーマで、日経の太田泰彦論説委員が出演して会議の意義や課題などを解説している。興味深いのは出演した太田論説委員が「書き下ろした新聞記事よりもずっとわかりやすい」という率直な感想をツイッターで語っているところだ。確かに文字数に制限があり、言い回しなどに厳格なルールがある新聞記事に比べ、ウェブでは話し言葉で書かれた文章の方が読みやすい。また、番組の中で用意した図表やイラストなども画像として利用することで、より理解を深めるための助けとなる。

 14日には第2回の「再び変わる就活ルール 問題点はどこにある(12/7放送分)」が掲載されている。今のところ週1本のペースで書き起こししていくようだ。確かに書き起こしは多くの時間がかかるため、なかなか全てのものを電子版へアップすることは難しいのだろう。だが、(1)まず取材内容を新聞記事に(2)その記事をもとにテレビ番組で解説(3)解説した内容を文字起こしして電子版コンテンツに――という流れで、“一粒で二度三度おいしい”コンテンツ活用となっている。

 なお、こういった取り組みで先行するのがNHKで、「クローズアップ現代」「時論公論」のようなニュース解説番組や、「おはよう日本」の「特集まるごと」といったコーナーで放送内容の丸ごとテキスト化を推進している。また、ラジオ局でもエフエム東京が、ラジオ番組内で伝えた情報をテキスト化してネットで公開する「TOKYO FM+」という取り組みを今年4月20日より始めた。もともとテレビ局の場合は、主に聴覚障害者や高齢者向けに「リアルタイム字幕放送(放送と同時に字幕を付加すること)」に以前から取り組んでおり、そこで入力したデータを活用できていることもあるのだろう。

 ウェブ上のテキストは、一つ一つのセンテンスを短めにし、空白を含む改行で区切っていくことでリズム感のようなものが生まれ、ある程度ボリュームのある文章であっても不思議と読みやすくなるように感じる。逆に、全体の分量はそれほどなくても、1段落が何百文字も続くとそれだけで読みにくくなってしまう。話し言葉でワンセンテンスが極端に長くなることはまずないので、その辺りが文字起こしした時に読みやすく感じる理由の一つではないだろうか。

 NHKではすでに人手による入力作業と音声認識を組み合わせたハイブリッド方式で作業を行っているようだ。今後音声認識の精度がさらに高まれば、メディアにとって文字起こしはコンテンツの活用という点でさらに広がってきそうな気がする。