edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

不適切見出しでスポニチと産経に330万円支払い命令

 長野市のあんこ卸売会社「丸冨士」が、新聞の不適切な見出しで名誉と信用を侵害されたとして、スポーツニッポン新聞社産経新聞社を相手に1000万円の賠償を求めた訴訟で、長野地裁(山本剛史裁判長)は16日、両社に計330万円の支払いを命じた。
 判決によると、08年9月、丸冨士が中国から輸入し、製菓会社に卸したあんから異臭がしたため、味見した従業員2人が吐き気や手足のしびれを訴えた。両社は共同通信社の配信記事に“毒あんこ”などと見出しを付け、発行するスポーツ紙に掲載。その後の検査で毒物は検出されず、丸冨士が有害物質が含まれたあんを納入したとの印象を与え、社会的信用を低下させた、としている。
毎日jp(毎日新聞)

 中国から輸入したあんを味見した製菓会社の従業員が吐き気や手足のしびれを訴えたという記事に、スポーツ紙が“毒あんこ”というインパクトのある見出しをつけたところ、あんの輸入元である会社がスポーツ紙を発行する新聞社に損害賠償を求めた訴訟。一審の長野地裁産経新聞社とスポーツニッポンの両社に計330万円の支払いを命じる判決を出した。
 該当の記事は共同通信社から配信されたもの。さすがにネット上には該当記事は残っていなかったが、少し探してみたらこちらのブログに他の新聞社がどのようにこの事件を報じたか残っていた。

中国製あんで2人嘔吐、おはぎ製造中に異臭し味見後…長野(読売)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080919-OYT1T00662.htm
 19日午後3時ごろ、長野市南高田の菓子製造業「丸生(まるせい)本店」で、従業員の男性(36)と女性(35)が、和菓子に使う中国製のあんに異状があったため味見したところ、嘔吐し、手足にしびれを訴えた。
 2人は病院に運ばれたが、症状は軽い。
 長野中央署は、毒物が混入された疑いもあるとみて、県警科学捜査研究所で、あんの分析を急いでいる。

異臭あんこ、中国の工場で製造 成分を検査(日経)
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080920STXKG011820092008.html
 長野市の食品製造販売会社「丸生本店」の従業員2人があんを味見し、嘔吐や手足のしびれを訴えた問題で、あんは長野市の食品材料販売会社「丸冨士」が中国に持つ合弁企業の工場で作られていたことが20日、分かった。
 長野市保健所が19日に行った簡易検査では有機リン系などの物質は検出されなかったが、あんは石油のようなにおいがしたといい、同保健所と長野県警が成分を詳しく調べている。

工場内の毒物混入「ありえない」…中国のあん製造元(読売)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20080920-OYT1T00343.htm
 長野市の菓子製造業「丸生本店」で粒あんを味見した従業員が手足のしびれなどを訴えた問題で、あんを製造した中国・青島の「青島冨士嘉食品有限公司」の従業員は20日、本紙の電話取材に対し、「工場内で製品に毒物が入ることはありえない。とても驚いている」と語った。

2人嘔吐の中国製あん、2・7トン回収へ…毒物検出されず(読売)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080920-OYT1T00643.htm
 長野市南高田の菓子製造業「丸生(まるせい)本店」で、粒あんを味見した従業員2人が手足のしびれなどを訴えた問題で、納入した卸会社「丸冨士」(長野市)は20日、中国・青島(チンタオ)の工場「青島冨士嘉(ジャ)食品有限公司」から輸入した粒あん136箱(約2・7トン)の回収を始めた。
 また、長野県警科学捜査研究所と長野市保健所の20日までの検査では、残っていた粒あんなどから農薬や毒物は検出されなかった。

 さすがに一般紙は「毒あんこ」のような見出しはつけていない。中国から輸入したあんから異臭がし2人が嘔吐したこと、回収されたが毒物は検出されなかったことなどが事実ベースで報じられている。
 “毒あんこ”という刺激的な見出しで読者にインパクトを与えたかったのだろうが、原因がはっきりしない段階で「あんこに毒が入っていた」のような印象を与えるような報じ方はやはり問題といえる。例えば裁判員裁判の導入を前に2009年2月に発表された東京新聞の「事件報道ガイドライン」では、「見出しで予断を与えないようにする」ことが明記されている。
 しかしネットを日々見てて思うのは、「刺激的な見出し(タイトル)を使って読者を釣る」手法があまりにも一般化しているがゆえに、このような予断を与える可能性がある見出しを匿名掲示板やまとめブログだけでなく、ネット専業メディアも多用していること。まだ事実かどうかわからないが、人々が飛びつきそうなネタ(スキャンダルや不祥事)について、2ちゃんねるtwitterなどへの投稿を適当につなげ、推測記事を仕立てて一丁上がりという手法が非常に目に付く。
 この「330万」という賠償額が一般化するのであれば、誹謗中傷に悩む世の中の大企業や芸能事務所などが一つの判断を下す契機になるかもしれない。