edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

朝日新聞デジタル版が創刊 紙に1000円プラス、様々な端末に最適化

 朝日新聞社は18日、パソコンやiPad、スマートフォン(アンドロイドOS搭載機種)などの電子端末で読める朝日新聞の電子版「朝日新聞デジタル」を創刊し、配信を始めた。紙の新聞のよさとデジタルの機能を融合させた「もうひとつの朝日新聞」をめざす。従来のニュースサイトのイメージを一新させる内容だ。
 朝日新聞デジタルは、毎朝配信する「朝刊」、24時間リアルタイムでニュースを更新する「24時刊」、コラムやエンタメ情報、生活に密着した記事などを夕方に配信する「You刊(ゆうかん)」で構成する。紙の新聞に匹敵する質・量の記事と、動画や読み物など電子版独自のコンテンツを、それぞれの画面に最適化した形で編集する。
 また、ジャンルやキーワードを設定し、興味のある分野の記事を収集できる「MY朝日新聞」や「スクラップブック」など、電子媒体の特性を生かした各種機能を搭載。過去1年分の記事も無料で検索できる。
asahi.com(朝日新聞社):朝日新聞が電子版「朝日新聞デジタル」 7月末まで無料

 今年初めくらいから噂されていた朝日新聞の電子版「朝日新聞デジタル」が、5月18日15時にスタートした。一つの契約で、パソコン、iPad、アンドロイドOSを搭載したスマートフォンなどのマルチデバイスに対応する。産経のように紙面画像をそのまま出すのではなく、それぞれの端末に合わせて記事が構成されるようになる。7月末までは無料で利用可能。
 広告イメージキャラクターは俳優の阿部寛。渋く知的な中年男性がメインターゲットということだろうか。なお、スタート時にiPadアプリがあるがiPhoneアプリがスタート時に用意されていなかったことについては、Appleの審査の関係らしい。
 【公式】⇒朝日新聞デジタル:朝日新聞社のニュースサイト
 【紹介サイト】⇒朝日新聞デジタル 総合ガイド
 コンテンツの柱は以下の三つ。

  • リアルタイムの最新ニュースが24時間態勢で更新される「24時刊」。「超速報」も。
  • 紙の新聞と同じように毎朝配信される「朝刊」。5/18は「東電原発工程表の改訂」「揺れるIMF」といった特集面も。
  • 暮らし情報や著名人による独自コラムが盛り込まれ、夕方配信される「You刊」

 なお、「新聞」を名乗るだけあり「テレビ欄」もきちんと用意されていた。
 また、電子版ならではの機能として以下のような機能・特長もある。

  • 朝日新聞本紙に掲載された過去1年分の記事検索・閲覧
  • 用語解説サイト「kotobank」(コトバンク)と連携し、様々な専門用語集から記事に出てくる用語を検索・解説
  • キーワードを登録するとニュースが自動編集され、1つの面にして配信される機能
  • 記事には複数の写真や動画

 iPad版では、1面に掲載されたトップニュースを1時間ごとに23時間前までさかのぼって閲覧できる「1面タイムマシン」が用意されている。画面に表示される時計の針を指回すだけで、過去にさかのぼってトップニュースの変遷を知ることができる。記者会見ではこの機能が「ハリーポッターの魔法新聞から着想を得た」と説明されていた。
 申し込みには朝日新聞社が運営する有料課金システム「Jpass(ジェイパス)」への登録が必要。支払いはクレジットカードのみ。個人が対象で、法人契約は現在のところ受け付けていない。もともと有料コンテンツ販売サイト「Astand(エースタンド)」を立ち上げたときに作った仕組みだが、他社(毎日新聞社)へのシステム提供開放を経て、いよいよ真打が登場したという感じだ。
 料金はデジタル版単独が月3800円、紙とのセットで1000円という設定。ただし7月末までは無料で、有料登録してもそれまでに解約すれば料金は発生しないと明記されている
 記事一つ一つをリストで時系列で並べるのでななく、ニュース大小の重み付けを行い、「面」という単位で構成しているのが大きな特徴。イメージとしては「The Daily」や「Financial Times」のiPadアプリに近い。iPadアプリは少し動作が遅いように感じた。あれだけのコンテンツボリュームであれば致し方ないかもしれないが、もう少しスムーズに動いてほしい。
 デジタル版の課金は朝日新聞社が直接クレジットカードで請求する形になる(日経電子版と同様)。つまり、紙と併読のダブルコースの場合、販売店が合わせて集金するのではなく、紙とデジタルが別々に決済されるという形。あくまで紙とデジタル版は別個の商品であり、紙を取っていると割引料金になるという図式だ。
 登録時に「ASA(朝日新聞販売所)紹介コード入力」という項目がある。おそらく販売店がデジタル版を営業した時に使う項目で、販売店経由で申し込めばデジタル版でも手数料が支払われるという構造なのだろう。
 様々な端末に合わせて記事・写真・動画を組み合わせ、24時間で編集を続ける体制など、技術と運用体制においては「さすが朝日」と言えるほどハイレベルなものに達していると思う。あとは売れるかどうか。記者会見では当面の目標を「10万人」と答えていたが、無料でいくらでも情報が取得できる中デジタル版単体で3800円出そうという人は正直なところなかなかいないだろう(海外在住者にはよさそうだが)。朝日新聞好きで、お金と時間に余裕がある中高年をターゲットに、既存の購読者の客単価上昇を狙うというのが当面の目論見か。
 ただ、このように技術水準と運用体制をハイレベルな状態に保つことは朝日新聞社の未来にとって決してマイナスにはならない。たとえ時代が大きく変わっても日本を代表する報道機関であり続ける、そんな決意を感じさせる電子版のリリースだった。