金融庁の大臣会見オープン化問題で朝日新聞が記者クラブ内情を披露
岡田外務大臣の記者会見オープン化や、亀井金融大臣の「記者クラブは封建的、全部オープンにしないとだめ」という記者会見での提言などが話題となっている鳩山内閣の「大臣会見オープン化」。ここぞとばかりネット専業のメディアからはJ-CASTやJanJanなどを筆頭に、「記者クラブは大臣会見を開放せよ」との声が上がっている。
金融庁では6日、従来通りの記者クラブを対象にした会見に加え、フリーランスや雑誌記者向けに改めて別の会見が開かれる事態になっている。これは、前述の亀井大臣の提言を受け、記者クラブ側で総会を開きクラブ員以外の出席および質問を認めるかどうかを審議した結果、社によって意見が割れ議論がまとまらず、幹事社である読売新聞の記者の裁定により要請を拒否することになったため。さっそくJ-CASTは「記者クラブに開放断られて 亀井氏『もうひとつの記者会見』断行」というこの経緯を扱った記事を掲載し、記者クラブの姿勢を批判している。
これに対し、批判される側の既存メディアによる記事はないかと探していたら、朝日新聞が10月7日に「大臣会見、フリー記者への開放 記者クラブ側、判断割れ」という記事で報じていた(asahi.comには探してみたが掲載されていなかった)。面白いのは、どの社が賛成で、どの社が反対であったかがはっきりと書いてあり、記者クラブ内でも対立があるということが明らかになったこと。
当該記事によると、明確に「賛成」を打ち出したのは朝日新聞、東京新聞とテレビ朝日。日経新聞、共同通信、テレビ東京も「参加を制限するはない」と示したのに対し、時事通信は「理想論だけで結論を出せる問題ではない」と反対の姿勢。読売新聞も「報道倫理を共有していることを前提とすべき」と慎重だったようだ。以下の表が記事によるフリー記者らの参加についての加盟各社の見解一覧。
朝日 | 出席者を記者クラブ加盟社に制限すべきではない |
毎日 | 各記者クラブが判断すべきだ |
読売 | 報道の実績があり、報道倫理を共有していることを前提とすべきだ |
産経 | 各記者クラブにおいての議論や見解を尊重したい |
日経 | 事情が許すなら、参加を制限する必要はない |
東京 | 国民の情報開示などの観点から、原則認めるべきだ |
共同通信 | 報道活動に一定の実績があるなら、原則オープンにすべきた |
時事通信 | 企業のインサイダー情報やプライバシーに触れる場合もあり、理想論だけで結論を出せる問題ではない |
NHK | マスコミ各社の議論を踏まえて、対応を検討する |
日本テレビ | 記者会側と大臣側が協議することが大切 |
TBSテレビ | クラブの状況を勘案して適宜対処すべきだ |
フジテレビ | (回答なし) |
テレビ朝日 | 知る権利への奉仕は、多くのアプローチがあってしかるべきだ |
テレビ東京 | 基本的に認めていい |
(2009/10/7 朝日新聞「<メディアタイムズ>大臣会見、フリー記者への開放 記者クラブ側、判断割れ>」より)
毎日や産経の「各記者クラブが判断すべきだ/議論や見解を尊重すべき」というのはよく意味がわからないが、今のところ保留ということなのだろう。簡単にまとめると賛成:保留:反対=6:6:1。明確に反対の意志を示しているのが時事通信というのも興味深い。経済や金融報道、マーケット情報を主力においている以上、金融庁や財務省のクラブへ他社に参入されるのは米びつを荒らされるような気持ちなのだろうか*1
それにしても不思議なのは朝日新聞がこの記事をasahi.comに掲載していないこと。ウェブに掲載しておけば「またマスコミの談合か」ではなく、実は内部でも意見の相違があり、その中でも朝日はオープン化に賛成していることから「朝日グッジョブ!」のような印象を与えられたかもしれないのに。まあ、ネットユーザーに対して朝日新聞の言い訳っぽく受け取られてしまう可能性もあるが。