edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

読売新聞、震災5年特集で360度動画を活用 被災地の今をVR体験

 読売新聞は東日本大震災から5年となる3月11日の1カ月前の2月11日、「震災5年〜再生の歩み」という特集コーナーを公開した。パソコン、スマートフォンなどで利用できる。

震災5年〜再生の歩み 航空写真と360度動画で知る東日本大震災からの5年間と現在 : 読売新聞
20160217192305

 福島・南相馬から岩手・宮古までの被災地12カ所について、震災発生の2011年3月から2016年2月まで定点撮影した航空写真と、記者が360度撮影可能なカメラを持ち、被災地の現状について現地の方からガイドを受ける様子を撮影した動画によって構成される大型企画。VR(バーチャルリアリティ)コンテンツである360度動画で被災地の今を見つめ、再生の歩みを振り返ることができるようになっている。

 コンテンツの柱である360度動画では、例えば観光客を被災地を案内する南三陸町の「語り部バス」のツアーに同行する様子や、釜石市宿泊客が震災当日に避難した裏山に登った様子などを視聴できる。再生しながら動画プレーヤー部分を指やマウスで動かすことで自由に回転させることが可能で、撮影している記者ももちろん映りこんでいる。好きな方向を見ながらガイドの方の説明も同時に聞くことができるので、これまでの平面的な写真や動画よりも自分が「その場」にいるような感覚を味わうことができ、コンテンツへ没入感がより深い。

f:id:edgefirst:20160217183658p:plain

 もう一つの柱である航空写真ではおおむね2011年3月から翌年2012年3月までは1カ月ずつ、それ以降は半年ごとに定点撮影した写真をスムーズな操作で閲覧することができる。撮影写真の微妙な差については、国土交通省の海岸線データと組み合わせることで、写真を切り替える際にズレを埋めるような配慮がされている。また、スマートフォンで写真の部分をタッチ(PCではマウスのボタンをドラッグ)することで、震災直後の写真と現在の写真の同じ場所を比較することができる。細かなところまで制作者のこだわりを感じさせるものであり、コンテンツとしての完成度は非常に高い。

 360度のVR動画については、リコーの「THETA」やコダックの「SP360」など、撮影できる機器が普及しつつあり、昨年3月にYoutubeが正式対応を発表Facebookも9月に対応するなど、手軽にアップロードでき、コンテンツの流通および視聴できる環境が整ってきている。

[参考]⇒360 度動画のアップロード - YouTube ヘルプ

 日本の新聞社では朝日新聞デジタルが昨年8月から「いきもの目線」コーナーを立ち上げ、土の中に埋めたカメラから動物園などで飼育されている動物や昆虫たちなどの様子を土中に埋めたカメラから撮影した動画を公開している。至近距離でその生き生きとした動きを描写しており、新しい技術を積極的に試していく姿勢を感じた。

 今回の読売の震災5年特集は、ユーザーに「被災地の今」をより深く伝えるという目的でVRを使っており、ジャーナリズムとして一歩踏み込んだ形と言える。新しい表現技法として、これからも活用が進みそうだ。ライブやイベントなどの様子の記録はもちろん、ハウツー動画などでも活用できるのではないだろうか。