edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

読売新聞、朝日の慰安婦報道検証で攻勢 チラシを各戸配布(追記あり)

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 8月5日と6日の朝日新聞朝刊に掲載された慰安婦問題の特集をきっかけに、新聞・雑誌・ネット上で様々な議論が巻き起こっている。主要週刊誌である週刊文春・新潮・ポスト・現代がそろって特集を組んで批判を続けているが、新聞社でも以前から朝日新聞への批判を続けている産経新聞だけでなく、読売新聞も朝日批判を大きく展開している。8月28日から連載「検証 朝日『慰安婦』報道」を開始。ウェブサイトYOMIURI ONLINEの最上部(グローバルナビゲーションバー)に「慰安婦報道」のメニューを設置しサイト内どのページからでもアクセスできるようにしている。ニュースサイトとしては破格の扱いでこの問題に臨んでいる。

 そんな中、上記のチラシが読売新聞を購読している世帯に折り込まれた。内容は朝日新聞慰安婦報道の問題点を指摘し、読売新聞に掲載された識者の声や社説の転載、8月5日以降に寄せられた読者の声(主に朝日への批判と読売への激励)で構成されている*1。見出しは「慰安婦報道検証 読売新聞はどう伝えたか」で、一貫して朝日新聞の報道内容を批判するものとなっている。朝日を購読している家庭にもポスティングされていたとの声もあり、この問題を契機に朝日の読者を奪おうという姿勢が伺える。

(追記:2014/9/10)
 9月8日に発売された週刊現代に、販売店関係者の声が載っていた。上記の「朝日を購読している家庭にもポスティングされていた」という情報を裏付けるものであり、チラシが本社の負担で印刷・配送されたものであること、読売が「千載一遇のチャンス」とみなしていることなのが読み取れる。

 これまで、「朝日=信頼のおけるクオリティ・ペーパー」と信じていた読者が、今回の騒ぎで急速に離れ始めている―これをチャンスと見ているのが、ライバルの読売新聞だ。読売の販売店関係者は語る。
 「販売店には読売本社からさまざまな業務連絡が来るのですが、8月20日付の連絡では『今月のポイント』の欄で『A紙作戦、千載一遇のチャンスです』と強調されていたんです」
 ここでいうA紙とは他でもない朝日新聞慰安婦問題で躓いた朝日から読者を奪って、販売を拡張しようというわけなのだ。その業務連絡の内容がなかなかえげつない。販売店関係者は続ける。
 「朝日批判のリーフレットを全額本社負担で刷ったので、読売読者の家の他にも、地図データでわかる限りの朝日読者や、元読売の読者の家にばらまけ、というんです。読売の読者センターにも朝日批判の電話がかかってきて、乗り換えたいという声が多いようです。読売本社の販売部からは『A社やA販売店が一番苦しい時に徹底的に攻撃を仕掛けましょう!」と言われています。
週刊現代 2014/09/20号「慰安婦報道でライバル・読売が大攻勢! 「朝日新聞」の憂鬱」より)

(追記:2014/9/27)
 さらに新しいパンフレットを制作し、各世帯に配っていることがわかった。20ページにもおよぶ大作で、朝日新聞慰安婦報道の問題点を「何が報じられたか」「何が起きているか」「何をなすべきか」の3章に分けて解説。最終章では「真実を知ることが解決の第一歩」とし、今後「明らかになった真実を国内外に発信すること」を読売新聞が責任持って行っていくことが宣言されている。また、この問題に関する新書を緊急出版し、新規読者や試し読み読者にプレゼントすることも行っているようだ。

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(追記終わり)

 紙面やウェブサイト、各戸配布チラシなどでここまで大々的に攻勢をかけているのは、やはり部数減少に対する懸念があるのではないか。ABC部数を調べると、2011年から2013年にかけてほぼ10万部減少(ただし11月のみ1000万部回復)という、他紙とそれほど変わりない減少幅で来ていたのが、今年に入って減少ペースが急加速。4月には前月比20万部減の948万部、7月には925万部まで落ち込み、6カ月連続の減少となっている。前年同月と比較して約60万部もの減少であり、神戸新聞の全部数(58万部)に匹敵する部数の減少が報告されたことになる。ついに販売店が発行本社からの目標達成のための数字を支えきれなくなったのでは、と思わせる落ち込みぶりだ。

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 おそらくはこのキャンペーンをきっかけに、11月に向けて部数を積み上げていくのだろう。例年通りであれば、今年も11月には部数の神がかり的な回復が見られるはずだ。

*1:ちなみに取り上げられた読者の年齢層は60代が大半