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国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

チラシ宅配のインフォメーションパック、販売店インフラ活用で到達率向上狙う

 「折込広告市場の活性化」を目指して、埼玉県所沢市内の読売新聞販売店(YC)16店が、3月9日から新たなサービスに乗り出す。新聞無購読者を中心とした登録会員向けに、チラシなどを無料でポスティングする「インフォメーションパック」だ。広告主に朝刊への折込と併用してもらうことで、新聞購読者と無購読者双方に広告を届けることができ、エリア内の「到達率アップ」がアピールできる。販売店がもつ既存のインフラを利用して、折込収入アップを図ろうというこの試み、注目が集まっている。(中略)
 所沢市内のYC16店を代表してYC東所沢・山本敬所長はまず「折込全体の底上げ」を強調する。インフラ(チラシの配送ルート、折込機械、配達網)はすべてそろっているので、今まで2000枚来ていたスーパーのチラシを会員向けにさらに500枚持ってきてもらうだけで配れる。折込到達率が上がれば、広告主も折込を持ってきていただけるだろうし、折込収入増も期待できる」と話す。(後略)
 (2011年2月28日付文化通信より)

 3月9日から始まる埼玉・所沢市内の読売新聞販売店によるチラシ無料宅配について、業界紙の文化通信が少し突っ込んだ記事を掲載していた。
 記事によると、この「インフォメーションパック」を利用した場合のチラシ1枚あたりの料金は以下の通り。この金額と、新聞折込の料金(読売isの埼玉県の料金[PDF])を比べてみると、新聞折込の料金よりも若干上乗せされていることがわかる。

種別  B6(A6)〜B4(A4) B3(A3) B2(A2) B1(A1)
インフォメーションパック 4円 5.35円 8.9円 14円
新聞折込 3.2-3.5円 4.7円 8円 12.4円

 これに対し、直接的なライバルであるポスティング会社の料金は様々。例えばGoogleで「埼玉 ポスティング」と検索したときの料金を眺めると、A4チラシ1枚あたり3円から5円程度と幅広い。ただ、ポスティング業者の場合「集合住宅配布」「一戸建て配布」という形では配布対象を分けられるが、最終的にどこに撒かれるのかは不透明な部分がある。さらに、期日を指定しての配布は難しく、できたとしてもコスト増となることが多い。確実な配達および期日の指定といった点では、チラシ配送ルートや配達スタッフなどの既存インフラを活用できる新聞販売店のアドバンテージは強い。
 また、チラシが欲しい家と欲しくない家に無差別に配布されるポスティングよりも、「チラシが欲しい」という意志を示して登録した家に絞って配ることができるため、反響も期待できる(のかもしれない)。
 減少傾向にあるとはいえ、折り込み広告は先日発表された「日本の広告費2010」でも5279億円に達し、新聞広告(6396億)に接近しつつある。無料登録会員への配布モデルでも、増えた登録会員の分だけチラシの枚数が増えれば収入増に直結するという非常にわかりやすく、成果も見えやすい。配達に既存インフラが生かせる点で、撤退したリクルートの「タウンマーケット」とは違った戦いができそうだ。とはいえ、これによって「チラシさえあれば新聞は要らない」という世帯が増えては新聞社および販売店にとって元も子もない。ある意味諸刃の剣である。
 配達する読売の販売店としては、チラシ収入だけでなく無読世帯との接点ができるということが狙いか。このインフォメーションパックの利用規約には当然ながら個人情報の利用目的に「新聞、その他商品のご案内」が含まれている。チラシ無料配達という形であれ販売店との間につながりを作り、少しずつ家に入り込んでいき、ゆくゆくは読者になっていくことを期待できれば、チラシの到達率向上と合わせ理想的な相乗効果が狙えるように思える。