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国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

北日本新聞メディア情報局長「記事のフリーアクセスには業界の誰もが疑問」

 新聞協会が出している「NSK経営レポート'10春号」に、北日本新聞社メディア情報局長・棚田淳一氏の「ウェブ新聞・webunが目指すもの」という記事が掲載されていた。今年の1月にオープンし、2月に主に北日本新聞の朝刊読者を対象とする完全会員制に移行したウェブ新聞「webun」のコンテンツ・機能の概要および、創刊の経緯が詳細に書かれている。なかなか興味深い話題だったのでメモ。

webunの主要コンテンツと機能

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  • 「ニュース」「スポーツ」「くらし情報」の3サイト構成
  • 朝刊掲載記事のアップは前日から発行当日の午前3時まで段階的にウェブ・ファーストで。速報のアップは随時。
  • 自社記事、情報は会員限定。通信社配信記事はフリーアクセス
  • 「マイスクラップ」機能は最大登録1000本。記事の並べ替えや重要マーク付けが可能。
  • 朝刊紙面イメージは午前5時に更新。過去7日分の閲覧可能。
  • 災害時に任意の自社記事をフリーアクセス化。見出しに「Free」マークが付く。
  • 災害時に情報や写真の投稿を受け付け、ユーザーが情報交換もできる防災・災害掲示板を持つ。通常は非表示。

抜粋

  • 「webun(ウェブン)」の名称は「ウェブのスピード」と「新聞の知性」の融合を目指した。
  • 2年前からメディア情報局でアクセス規制を前提にしたニュースサイト研究を開始。09年3月に社内各局代表で構成する委員会を立ち上げ、10カ月でwebun創刊にこぎつける。
  • webunは広告モデルを追及しない。ネットの広告が今の100倍、できれば1000倍にならない限り未来は構築できない。ニュースへのアクセスのしやすさを第一に、トップページの目立つ場所に派手なバナーを張ることを止めた。
  • 購読者限定にすることで、無料の記事流出を気にすることなくコンテンツを投入できるのは実に「気持ちがいい」こと。webunの充実が紙の読者の確保、あるいは獲得につながるという目的があるから。
  • 創刊に向け、メディア情報局の担当部署を3人増員し7人に。営業局にクロスメディア営業部を新設。会員管理を担う販売局も組織変更。
  • 2010年1月から編集局のウェブ担当の出稿デスクを置き、本社や支社に動画撮影できるカメラを配備。3月からはメディア情報局の担当部署を編集局に組み入れ、部員も増強して「デジタル編集本部」を新設。
  • 2009年12月に夕刊を休刊にしたが、「夕刊からwebunへのシフトは時代の要請に合わせた報道体制改革」と前向きに捉えている。
  • 3月末の会員数は1万4000人(注・朝刊発行部数は約24万部で、部数の5%強)。販売局の登録キャンペーンが大きく寄与。富山県外の有料会員についてはそれほど期待していない。
  • 「なぜ購読者しか見られないのか」という苦情はほとんどなし。
  • 会員制を支えているのは購読確認。申し込みがあれば当日中に販売店に照会する。購読確認のための会員DBの構築に苦労。個人情報と販売店名の自動連結や販売店別の会員データ出力などの課題に悩まされる。
  • 新聞1部につき1IDで、そのIDが家族や会社の中でどう利用されるかは関知しない(なお日経新聞電子版はIDの使い回しは禁止)。ただし重複ログインには制限を設けている。同じIDで同時に複数人がログインできない。
  • webunに独創性はない。新聞社にとって最大の財産である自社記事がフリーアクセスであることについて、新聞にかかわるだれもが疑問を持っているはずだから。