edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

三浦和義氏の妻が名誉棄損で産経新聞と配信先のヤフーを提訴

 81年の米ロサンゼルス銃撃事件で逮捕され、08年10月にロス市警の留置場で自殺した三浦和義さんの妻が、ウェブサイト「YAHOO!JAPAN」に掲載された産経新聞の記事で名誉を傷つけられたなどとして、産経新聞社とヤフーに660万円の賠償を求めて提訴していたことが分かった。14日に東京地裁(松並重雄裁判長)で開かれた第1回口頭弁論で、両社は争う姿勢を示した。
 訴えによると、両社は08年10月12、13日、三浦さんの自殺を受け、事件の被害者遺族のコメントなどを掲載した。「日本で無罪が確定しているのに、(三浦さんを)犯人と断ずるコメントを何ら注釈なく引用した」などと主張している。【和田武士】
三浦和義さん:妻が産経などを提訴 名誉棄損で - 毎日jp(毎日新聞)

 昨年ロサンゼルス市警の留置場で自殺した三浦和義氏の妻が産経新聞の記事で名誉を傷つけられたとして、産経新聞社および産経から配信された記事をウェブサイトに掲載したヤフージャパンを提訴したとのこと。記事の配信先ウェブサイトを含めて名誉棄損で訴えた例は珍しいように思う。
 当時の記事をデータベースで調べてみたところ、三浦氏を取り調べた警視庁の元刑事や、殺害された妻の一美さんの母のコメントを三浦氏の親族のコメントとともに併記していた。確かに元刑事のコメントは「事件についておびえていたのは間違いない」「『逃げられない』と観念し死を選んだのでは」など犯行関与を確信しているが、「日本では無罪確定」ということは記事の冒頭で明記しており、産経新聞社としては争う姿勢を見せている。
 ここで考えさせられるのは、記事の配信を受けたウェブサイトにどこまで掲載責任があるかということだ。かつての三浦氏関連の名誉棄損裁判では、たとえ通信社が取材した記事を配信を受けた地方紙がそのまま掲載した場合でも、その記事を掲載した新聞社も責任を免れなかった(最高裁判決平成14年3月8日)。この判例を踏まえれば、もし今回名誉棄損を訴えている三浦氏遺族側の主張が認められれば、記事を掲載したヤフーニュースも責任を免れないことになる。
 こういう裁判の対象になったということは、日本最大のニュースサイトであるヤフーニュースが、「大いなる力には、大いなる責任が伴う (With great power comes great responsibility.)」という立場になったということだろう。産経新聞の紙面やMSN産経ニュースだけに載るより、ヤフーニュースに掲載され「トピックス」に取り上げられるほうがよほど影響力が大きいことは間違いない。
 ただ、ウェブ上のニュースサイトにとってみれば、わざわざ訴訟リスクを負うくらいなら、裁判報道は一切掲載せず、代わりによりアクセスが稼げる芸能・スポーツニュースに注力するという方針に変更することも考えられなくはない。ヤフーニュースやその他のニュースサイトの今後の記事掲載ポリシーに変化があるだろうか。