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国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

雑誌100誌が連携した記事の有料配信実験が27日開始

 文芸春秋、講談社、小学館など大手を含む50の出版社が協力し、雑誌の記事をインターネットで有料配信する共同サイトの実証実験が27日から始まる。携帯電話などから雑誌を検索、目次を見て気になる記事だけを読むことができ、11年の実用化を目指す。「記事のばら売り」とも言え、雑誌本体の売り上げを減らす恐れもあるが、雑誌の総売り上げはピーク時の7割近くまで落ち込み、業界にとっては、のるかそるかの挑戦だ。
 「週刊文春」「週刊現代」「サンデー毎日」などの一般週刊誌から、「CanCam」などの女性誌や専門誌まで50社最大100誌が参加する。
毎日jp(毎日新聞)

 日本雑誌協会が音頭を取って開始する雑誌記事の有料配信サービス実証実験が1月27日に開始するとの記事。実験では事前に募集した3000人のモニターに通貨に見立てたポイントが与え、購読したページ数などに応じてポイントを支払うとのこと。「1記事あたり○○円」というのは日経テレコンなどのデータベースで先例があるが、読んだページ数に応じてポイントを消費するというのは少し新鮮。
 電通によるiPhoneアプリの雑誌有料配信や、米国での電子書籍端末の急速な普及など、近頃動きが激しい業界だが、ビューアとなる端末の精度向上や通信インフラの整備など数年前に技術的な課題として挙げられていた点についてはほぼメドがつき、あとは「どうやってビジネスとして成り立たせていくか」すなわち「儲かるか」の点に課題がシフトしているような感がある。
 以下ののPC Watchの本田雅一氏記事がそのあたりの事情に詳しい。

 日本での電子ブック事業に詳しい関係者に取材してみると、電子ブック化に際して日本の大手出版社は、売り上げ全体の7割を自分達が取りたいと主張しているようだ。つまり印刷コスト分は自分たちの取り分に組み込み、取り次ぎ分は流通コストの一部として電子ブック販売ポータルに渡す計算となる。
 ところが、実際にはこれでは電子ブックの販売ポータルは、3割の取り分では利益をほとんど出せず、赤字になる可能性が高いと主張する。細かなコストの話はここでは省くが、出版社の在庫リスクがなくなる分や、価格を安くした上で滞りのない流通・販売のシステムを構築するための開発コストなどを考えて、もっと流通側のコストが大きくなるというのだ。
 たとえばソニーは日本での電子ブック流通に関して50対50程度が適当ではないかと話している。この数字は、しかもかなり譲歩した数字として出されているものだ。アマゾンは昨年末、大手出版社にKindle向けの電子書籍に関して、アマゾン側の利益が7割となるライセンス条件を打診して、業界内には激震が走ったという。
 7割という数字はアマゾンにしてみれば特別なものではなく、Kindleというワイヤレス通信無料の電子ブックリーダーを流通させるリスクを背負い、使いやすく人がたくさん集まる販売ポータルを構築した上で、後からその仕組みに乗っかって在庫リスクなく書籍販売するのであれば、それぐらいは当たり前という感覚があるからだ。
【本田雅一の週刊モバイル通信】 2010年の電子ブック事情:PC Watch