edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

デザインが新聞を救う?東欧の新聞デザイナーからの提言

 monochrome pleasureさんで新聞とデザインに関する面白い記事が取り上げられていた。

 東欧各国で新聞デザインに携わり、発行部数を大きく伸ばしているポーランド人デザイナー、ジャチェック・ウツコ氏が来日。東京都内で開かれたイベントで「デザインは新聞を救えるか」というテーマで講演した。(秋田魁新報共同通信2009.12.22朝刊。)

  • デザインによる新聞の立て直しには事業戦略と紙面の内容との一貫性が必要だと強調。「デザインだけ良くても決して成功しない」
  • 情報の重要性が一目で分かる一覧性ことが、インターネットにはない、新聞の強みであることを指摘。
  • 1面は目次ではなく(ビジュアル重視の)ポスターのように扱い、紙面は物語のように読者を誘導する構成が重要
  • 日本の新聞は「世界的に見ても写真が少ない。漢字が視覚的に同じ役割を果たしているからでは」と推測。
  • 記事が短くまとまっているところは優れている
  • 紙面構成が複雑
  • 見出しや写真の大きさにもっとメリハリをつけることで、ストーリー性のある紙面をつくることができる
  • 魅力的な商品をつくり続ける義務がある
  • 変化を恐れぬ勇気が必要だ

はてなダイアリー

 もう少し詳しい記事はないかと思い探したところ、ウェブ上で読めるものとしてはこちらの藤代裕之さんの日経IT-PLUSでの記事があり、詳しくレポートしていた。
テクノロジー :日本経済新聞
 講演したポーランド人デザイナー、ジャチェック・ウツコ氏は、デザイナーとしてリデザインに関わったロシア、ポーランドで新聞の売り上げを約30%、ブルガリアでは100%も伸ばし、各国のデザイン賞を受賞したそうだ。
 もっとも氏は、ただデザインに凝るだけでは駄目で、きちんとした調査に基づいた分析と、デザインだけが突出するのではなく「コンテンツをどう見せるか」との観点が不可欠と説いている。

 「ブルガリアだったから簡単なのだろう、イギリスなどの成熟した市場とは違う、と思うかもしれない。だが、競合紙がほぼ同時にリデザインしたが売り上げが下がったこともある。なぜ? それはデザインに力を入れすぎ、読者に合わなかったからだ」
 この発言は、ウツコ氏のリデザインの考えを物語る。見栄えを変えるだけではなく、戦略、コンテンツ、デザインの3つが揃うことが重要で、(1)マーケットと競争分析、(2)SWOT(機会、脅威、強み、弱み)、(3)目標を定め、そしてどうするか考える――などの必要があり、事前のプランニングには2〜3カ月かけるという。
 デザインは感覚的、直感的なものと思われがちだが、デザインだけが突出することを戒める。「新聞をダメにしているのは、読者のことを考えてない編集者(95%が書いたり、編集したりで、どう見せるのかは5%)とアーティストのように振舞うデザイナーだ。そうではなく、コンテンツ志向のデザイナー、ビジュアルを気にする編集者の協力が必要。編集者にとってデザイナーは友」と強調していた。
テクノロジー :日本経済新聞

 デザイナー主導の新聞紙面といえば、朝日新聞に週1回折り込まれる「朝日新聞グローブ」が真っ先に思い浮かぶ。上質な紙を使った横組みの紙面で、グローバルな視点を強く意識した掘り下げた取材による特集記事が並ぶ、端的に言ってとても「カッコいい」新聞だ。「新聞を読んでいるとダサく見られる」といった若者や、ワールドワイドな視野を持つエグゼクティブ層にも受けそうなテイストである。そういえば産経の新しいタブロイド判の媒体である「SANKEI EXPRESS」も創刊当初はSMAPの木村拓哉をCMキャラクターに起用し、「美しい新聞」としてPRしていたような。
 今まで慣れ親しんだ紙面作りも大事だが、時には読者に「内容が良くて、しかもカッコ良い!」と思わせるような紙面もあってもいいかも。それにはデザインの力は欠かせないものになるのだろう。