edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

下野新聞が電子版創刊 全記事をビューアとテキスト表示、記事の読み上げやキーワード自動収集も

 栃木県の県紙・下野新聞が6月1日、有料電子版を創刊した。紙面と電子版との併読プランは税込み月額455円(セットで3,490円)、電子版の単独プランは月額3,499円(税込み)。併読プランは販売店による集金時に上乗せとなり、単独版はクレジットカードによる支払い。登録した初月は無料で、初回登録のみ契約月内での解約でき、無料での試用が可能となっている。なお、利用はiOSおよびAndroidスマートフォンタブレットのアプリで行い、パソコンでの利用は不可。1つの契約で同時に3つまでの端末で利用可能だ。

[内容紹介]⇒下野新聞電子版 ~スマホでいつでもどこでも~
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[リリース]⇒下野新聞電子版 6月1日創刊 スマホでいつでもどこでも|下野新聞「SOON」
iOSアプリ]⇒下野新聞電子版を App Store で
Androidアプリ]⇒下野新聞電子版 - Google Play の Android アプリ

 2014年4月にリリースした無料アプリ「下野新聞+NAVI」インストールしていると、強制的にバージョンアップが促され、下野新聞電子版アプリが自動的に利用できるようになる。「下野新聞+NAVI」は基本的に新聞紙面とセットで使うことを想定されていたが、アプリ機能強化による有料化と捉えても良さそうだ。なお、iOSの場合アプリから直接会員登録の申し込みができず、ウェブサイトで「しもつけID」と電子版の有料会員登録をしておく必要がある。

 大きな特徴として、朝刊に掲載されたほぼ全ての記事を新聞レイアウトの「紙面ビュー」と「テキスト表示」の2つの形式で読むことができる。さすがに日経や朝日などの全国紙では対応しているが、地方紙の有料電子版でこれができているところは実はほとんどなく、多くの社は紙面イメージをアプリ上で拡大と縮小できる程度。アプリ内では記事の紙面上の扱いや位置がわかるようになっており、どのくらいの大きさで扱われたのかひと目でわかるようになっている。

 ほぼ全記事のテキスト化が朝5時までにできているということは、新聞制作システムと電子版とのシステム及び運用の連携がきちんとできているということだろう。なお、紙面ビューはアプリからブラウザを別に開いて表示する形式となる。この動きがアプリ内で完結するとよりスッキリするのだが…。ビューアは共同通信社が加盟社に向けに提供しているものを利用している。

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 ほぼ全記事のテキスト化を実現していることで、あらかじめ取引先の会社名や子どもの通う学校名などのキーワードや、ジャンルや地域を登録しておくことで、その日の朝刊に関連する記事が載っていれば朝スマホに直接通知を送って知らせる機能が実現できている。紙面記事の読み落としを防ぐ便利な機能だ。

 また、「音声読み上げ」も意欲的な取り組みだ。東芝の「RECAIUS(リカイアス)」という音声合成ソリューションを利用し、自然な読み上げを実現している。ただ、固有名詞などへの対応はまだまだのようで、例えば「栃木高」を「とちぎだか」と読んだり、人名・地名については読み間違いも多い。記事をMYページに保存しておくと、MYページで選んだニュースで連続再生してくれる機能もある。クルマ通勤の人にはラジオニュースの代わりとして使えるかもしれない。

 「電子版プレミアム」というコーナーでは、紙面に掲載しなかった記事を収録してる。さらっと見る限りは紙面に使用しなかった共同通信の配信記事で、比較的長文の解説・分析記事や話題になりそうな海外ネタを掲載しているようだが、せっかくの「プレミアム」なコーナーなのだから、下野新聞オリジナルの記事も読みたいところだ。

 なお、前身の「下野新聞+NAVI」で実装されていた「ワンクリックアンケート」や、県内の事件・事故の速報ニュース、警察や行政が発信する生活安全情報や防災情報は引き続き提供されており、ログインしていなくても利用できる。無料アプリで3年間サービスを提供してきた経験とノウハウが、有料電子版としても十分に生かされている印象を受けた。

 内容を紹介する告知サイトも非常にわかりやすく上手な見せ方をしている。当初はPCを切り捨て、スマホタブレットに集中したのもユーザーの利用シーンを考えた上の判断だろう。ただ単純に「紙面イメージがアプリで読めます」「他地域の地方版も読めます」という謳い文句の地方新聞社の有料電子版が多い中、ほぼ全記事のテキスト表示や音声読み上げ、ジャンル・キーワードによる記事の自動収集など、意欲的な機能を盛り込んだ出色のサービスだ。

 電子版としてのサービスの基礎はしっかりしているので、次の展開は「ワンクリックアンケート」のような、ユーザーとのコミュニケーション機能の強化だろうか。ログインして利用することが前提であり、登録時に入力した名前や住所を利用することで、投稿や懸賞への応募や、記事に対する意見や感想の投稿を簡単に行うことができるだろう。読者との距離を縮めることのできるツールとしての活用も期待できそうだ。