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edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

日経、企業の決算記事を自動作成 速さ・多さ・完全自動をアピール

 日本経済新聞社は1月25日、上場企業が公開した決算データを元に自動的に記事を作成し掲載「決算サマリー」のベータ版を公開した。いわゆる人工知能(AI)を本格的に活用して記事を自動作成する例としては日本で初めて。日経が出資するAI技術に強みのある徳島県の言語理解研究所と、AI研究で実績のある東京大学松尾豊特任准教授の研究室と技術やノウハウ、研究成果を持ち寄り、日経のエンジニアと共同で開発した。

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 東京証券取引所が運営する適時開示サイト「TDnet」に企業の決算情報が掲載されると、数分後に記事を作成して日経電子版の「マーケット>企業」「日経会社情報DIGITAL」と日経テレコンのウェブサイト内に掲載される。日経本紙には使用しないとのこと。また、自動で作成された記事は文章末尾などに自動で生成された旨を記載している。

[PRページ]⇒完全自動決算サマリー by NIKKEI
[記事一覧]⇒決算サマリー(Beta) :企業 :マーケット :日経電子版

 自動生成された記事を読むと、純利益、売上高、経常利益、営業利益の数字や増減について今期の報告と次期見通しといったように、ある程度の法則性に基づいて作成されているようだ。ただ、単純に数字を拾ってきているだけでなく、業績の要因となった原因や背景についてもある程度記述しているケースも多く、記事としての違和感は少ない。決算発表の適時開示情報は一般に非常に長いことが多く、その中から要点だけを抽出してコンパクトにまとめることで読む時間の節約になるだろう。

 大きな特徴として、(1)速い=発表後数分以内に掲載(2)多い=上場企業3600社の大半に対応(3)完全自動=作成から掲載まで人の一切手をかけない完全自動――の3点がアピールされている。グループ媒体の日経ビジネスオンラインでは早速「生身の記者が勝負を挑んでみた」という記事がアップされており、昨年まで実際に決算記事を書いてきた記者が勝負を挑み、処理件数やスピードでは勝負にならず、内容についても場合によっては互角という結果。さらに記者が書いた原稿には記事内の固有名詞や数字に間違いが見つかるというオチまでついた。

AI記者に生身の記者が勝負を挑んでみた:日経ビジネスオンライン

 海外ではAP通信が同じように企業決算情報を自動要約して配信を行ったり、マイナーリーグ野球の試合のまとめ記事を試合の記録から自動的に作成するといった事例がある。探してみたところ、昨年のマイナーリーグ公式サイト内のそれぞれ試合結果・記録を伝えるページの「Recap(総括)」というコーナーで、文末に「This story was generated by Automated Insights」という但し書きが付けられた文章があった。ルーキーリーグ、1A、2A、3Aまで膨大な数の試合経過を、150ワード前後の文章でコンパクトに伝えている。

[参考記事]⇒AP通信、マイナーリーグ野球の記事を「ロボット」記者が報道 | TechCrunch Japan
AP通信の発表]⇒https://www.ap.org/press-releases/2016/ap-expands-minor-league-baseball-coverage
[実際の記事例]⇒Akron vs. Altoona - September 7, 2016 | MiLB.com Recap | The Official Site of Minor League Baseball

 記事の自動生成に取り組む意図としては、「機械にできることは機械に任せ、本来人間にしかできない仕事に集中してもらう」ということが開発者から表明されている。確かに発表された資料を元に記事を書くのであれば、経験を積んだアルゴリズムは速さや正確さにおいて無双の働きをするだろう。例えば人間の記者が書く際も、下書きをまず機械が書き、そこに人間の記者が考察や分析を加えるというスタイルにすることで効率化が図れるかもしれない。

 報道機関のAI活用例として具体的な活用事例を日本の先頭を切って示し、ベータ版とは言え本格運用を始めた意義は大きい。このように具体的な活用が目に見えるようになることで、さらなる新たなアイデアを開く可能性があるだろう。このプロジェクトをきっかけに、どのようにAIが活用されていることになるのか期待したい。