edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

地方紙合同のサイト開設続く 原発と米軍基地、北関東の観光情報をテーマに

 沖縄タイムス社と福井新聞社は17日、「フクナワ 福井と沖縄、原発と基地のニュースサイト」を開設しました。
 国土面積の0・6%の島に在日米軍専用施設面積の約74%が集中する基地の島・沖縄と、15基の発電所で全国の原子力発電量の25%超を賄う“原発銀座”の福井。東京の永田町や霞が関で決められた「国策」が、地元ではどう動いているのか。
 生身の県民と寄り添ってきた福井新聞(1899年創刊)と沖縄タイムス(1948年創刊)の記事を集め、デジタル技術を生かしながら、全国ニュースでは見えてこない実相を浮かび上がらせます。推進派、反対派、さまざまな読者の声も掲載し、それぞれの問題を深く考えられるようなサイトを目指します。
基地と原発のサイト「フクナワ」誕生 沖縄タイムスと福井新聞連携 | 沖縄タイムス+プラス

 下野新聞社上毛新聞社前橋市)、茨城新聞社水戸市)の北関東地方紙3社は10月1日、3県の観光情報をインターネットで発信するサイト「きたかんナビ」を開設する。2011年の北関東自動車道の開通などに伴い結び付きがより強くなった北関東の魅力を、地方紙独自の取材力を生かした記事や写真、動画などで紹介。県の枠を超えた観光情報が手軽に入手できるようにして、観光誘客と3県のブランド力向上を目指す。
 利用者の興味に合う記事を探しやすいよう、レジャーや食・グルメ、趣味、パワースポット、自然などとカテゴリーを細かく分類。各紙の記者が取材、執筆した関連記事など3県の情報を一覧で表示する。「秋の観光特集」など、季節ごとの企画も取り上げる。
北関東3県の観光情報発信 下野など3新聞社がサイト開設|下野新聞「SOON」

 地方紙が連携した特定テーマについてのニュースサイトが相次いで開設された。9月17日には沖縄タイムス福井新聞が、原発と米軍基地をテーマにしたニュースサイト「フクナワ」を開設。10月1日には下野新聞、上毛新聞、茨城新聞の北関東3社が、北関東の観光情報を発信する「きたかんナビ」を開設した。いずれも無料で利用でき、パソコンだけでなくスマートフォンに最適化されたサイズでも閲覧できる。

フクナワ | 〜福井と沖縄、原発と基地のニュースサイト〜

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 「フクナワ」は、原発と米軍基地に半世紀以上向き合ってきた地元の2紙が共同で立ち上げた。「原発銀座」と呼ばれ、再稼働や廃炉といった課題を抱える福井県と、米軍普天間飛行場辺野古移設問題に直面する沖縄県のそれぞれのニュースを掲載している。記事には「首長・議会の動向」「住民の声」「政府などの考え」「司法・トラブル」といった共通のジャンルを設定し、基地と原発という異なるテーマを同じ切り口で分類している。また、各記事には「共感した」「共感しなかった」ボタンがあり、閲覧者の意見が投票できるようになっている。

 米軍基地と原発という、「国策」として進められてきた深く重いテーマについてのニュースが豊富に掲載されたサイトであり、地元ならではの視線が様々につめ込まれている。特に福井新聞は2000年にさかのぼって記事を蓄積しており、福井県原発の歴史をたどる重厚なアーカイブとなっている。ただ、「ニュースサイト」という性質上、新しいニュースが優先して表示されるため、そもそも何が問題なのか、どこが重要な決断の節目なのかといった、前提となる基礎知識や歴史的な経緯はなかなか理解しづらいように感じる。

 「基地と原発のすべてを知ることができるサイトにしたい」ということがサイトの目標であれば、例えば、朝日新聞参考)や西日本新聞参考)のニュースサイトなどで導入されている「タイムライン形式」のように、時系列でわかりやすく表示する形式で、年月別に過去からの経緯を表示できるようになれば便利だろう。また、基地問題原発を知る上でイントロダクションとなる「最低限この記事は読んでおいてほしい」というコンテンツを大きくアピールすることも理解を深めるための大きな助けとなるに違いない。

きたかんナビ | 北関東を感じる観光情報サイト

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 もう一つの「きたかんナビ」は、茨城・栃木・群馬3県の3紙が観光情報を発信する合同ウェブサイトだ。今年3月の北陸新幹線の延伸開業に合わせ1月14日にオープンした「北陸・信越観光ナビ」とサイトの構造やデザインが良く似ている。写真を大きくグリッドスタイルで配置する今風のレイアウトで、スマートフォンでの閲覧を強く意識したものとなっている。「北関東を感じる観光情報サイト」とのコピーが付けられており、記事・写真・動画と位置情報を組み合わせたコンテンツを提供している。

 面白い工夫だなと思ったのは、利用者の現在地周辺の観光情報を提供するだけでなく、高速道路の各インターチェンジ周辺の情報を一発で検索できるようにし、ICからの距離を合わせて表示していることだ。週末ドライブの下調べの際に便利に利用できるだろう。また、「きたかんナビ」という名前が非常に入力しやすいのもポイントだ。先発の「北陸・信越観光ナビ」と比べ、検索の際に段違いに入力文字数が少なくて済む。

 ただ、新聞記事の転載が中心となっているため、どうしても5W1Hを基本とした簡潔な記事が多くなってしまってい、感性に訴えるにはまだ工夫の余地があるように感じる。また、地方紙の記事は「その県の住民」であることを前提にした書き方となることが多く、県外在住者へ読んでもらうことを直接意識しないことが多い。北関東圏の魅力を掘り起こし、それを圏内外の人々へ伝えていくためには、新聞記事のスタイルからもう一歩進み、ネットの文脈に合ったコンテンツにしていくことが必要のように思えた。

 2つのサイトがほぼ同時期に立ち上がった背景には、コスト面でサイトを立ち上げる敷居が低くなったことや、CMSによって出力される記事のフォーマットが標準化し、他サイトへの配信や連携がやりやすくなってきたことがあるのだろう。面白いのは福井新聞沖縄タイムスも新聞読者の優遇を目的とするクローズドなサイトを運営する一方で、こういったオープンな情報発信も引き続き推進していることだ。地方の声を届けることが目的のコンテンツであれば、く、様々な媒体に露出させていく方が有効であることは間違いない。運用負荷とのトレードオフでもあるが、そこで記事に付加情報を足すことで価値を向上させることができれば、より影響力を増すことができるだろう。

 逆に予想よりも効果が薄かったり、設定した目標に届かなければ、本体サイトではないので柔軟に撤退や運用を縮小していくことも考えられる。新たなサイトを立てるハードルが下がっているだけでに、今後もいろいろなチャレンジを見ることができそうだ。