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毎日新聞、動画「注目ニュース90秒」開始 ライブ感覚でニュース解説

 毎日新聞は6月1日から、記者やデスクが編集局から記事について動画で解説する「注目ニュース90秒」を開始した。主に夕刊の1面などで大きく扱われた記事をテーマに、記者や担当デスクがその背景や注目ポイント、今後の見通しなどを90秒でコンパクトにまとめて解説する。これまで「自転車の運転取り締まりを強化」「錦織なぜ好調?」「東大女子、なぜ増えない?」「地域猫ってどんな猫?」「安保法制審議に逆風」といった話題を動画で解説している。

 収録現場の写真を見ると、家庭用のビデオカメラとピンマイク、そして小型ホワイトボードだけのシンプルな小道具で撮影されている。おそらくは夕刊作業を終えた担当デスクが、そのまま撮影に臨んでいるような感じだ。周囲のざわざわした音や、共同通信のニュース予定や記事配信を知らせるピーコの音声がそのまま入ってくるところが編集現場のライブ感覚たっぷり。動画編集も最小限で、「撮って出し」の映像としてニュースサイト上に公開している。

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[該当記事]⇒改正道交法:1日スタート 自転車のルールを街頭指導 - 毎日新聞
[これまでの動画]⇒毎日動画 特集 - 毎日新聞

 他社の事例では産経新聞が2010年1月ごろから2011年3月11日まで、担当編集長が今日のイチ押し記事を動画で解説する企画を実施していたことがある*1。当時の感想としては

 とりあえず感想としては、「こういうことにチャレンジしようという姿勢は素晴らしいが、やや期待はずれか」といったところ。
 その日の記事の中から、特に注目となる記事に焦点を当ててその背景などを説明するのだが、時間が3分超とやや長く、しかも淡々としゃべる人が多く、何本か見たがすべて途中で飽きてしまった。また、取り上げる注目記事も「普天間問題」「政局」「JALリストラ」など、硬派(政治や経済)記事に偏っているように感じる。少なくとも動画の長さは今の半分くらいにして、しゃべりに抑揚をつけた方がいいような気がする。
産経新聞編集長がイチ押し記事を動画で解説 Youtubeで公開 - edgefirstのブログ

 と、やや辛口なものだった。これに対し毎日は90秒という短時間で、担当者が顔をさらし、ホワイトボードでポイントを絞りながら、自らの言葉でユーザーに届けようとしており、格段の差があると言っていい。

 より多くの人に記事を伝えていくためには、新聞記者やデスクもカメラの前でしゃべることをためらってはいけないという方針なのだろう。こういったところで練習しておけば、テレビ番組やネットの生放送に呼ばれてコメントを求められた時にも活用できそうだ。書くだけでなく、伝えるためのノウハウを学ぶことができるという点で、記者やデスクにもメリットは大きいのではないだろうか。日本の新聞社として初めて一般記事の原則署名化に踏み切り、個性的な記者が多いことで知られる毎日だけに、今後の展開が楽しみだ。

 毎日新聞はこれ以外でも、6月から社公認のTwitterアカウントを持っている記者については、記事の末尾にアカウント名が明記されるようになった。また、同時期に編集局内の各部署や地方支局などで競い合うように新たなツイッターアカウントが開設され、自分たちのニュースをツイートしている。

 編集部門のトップである小川一・編集編成局長(6月24日付で取締役総合メディア戦略・デジタル担当に昇任予定)がツイッターで1万4000人のフォロワーを持ち、注目記事を自分の言葉で日々紹介していることも大きい。トップ自らデジタルメディアを使いこなす毎日だからこそ、こういった企画が次々に出てくるのだろう。デジタルに真剣に向き合っていく姿勢を感じた。

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*1:東日本大震災の発生で一旦終了し、「今日の産経新聞 7DaysPhoto」というスチール写真を組み合わせた動画でニュースを紹介する企画に代わったもよう