edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

スマホと紙面をいつでも連携 日経電子版のアプリ「もっと日経」

日本経済新聞社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:岡田直敏)は17日、紙の新聞と電子版を連携させて楽しめるスマートフォンアプリ「もっと日経」をリリースしました。スマホのカメラで新聞記事を撮ると、キーワード、関連記事、連載のバックナンバーなどの情報を表示します。おなじみの紙の新聞が、豊富な機能を持つ電子版と組み合わさることで、双方の長所を引き出します。個別の記事をさらに深く理解し、面白く効率的に情報を収集できます。
スマホで紙の新聞をもっと楽しめるアプリ「もっと日経」スタート|株式会社 日本経済新聞社のプレスリリース

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 日本経済新聞社は5月17日、紙の新聞と電子版を連携することでより深く情報を得られるスマートフォン向けアプリ「もっと日経」をリリースした。iOS7およびAndorid4以上のOSが対象で、当初は日経電子版の有料会員が対象だが、無料会員でも今後一部機能が使えるようになることが告知されている。

[紹介ページ]⇒もっと日経 紙の新聞をもっと楽しむアプリ App Store
iOSアプリ]⇒iTunes の App Store で配信中の iPhone、iPod touch、iPad 用 もっと日経 紙の新聞をもっと楽しむアプリ
Androidアプリ]⇒もっと日経 紙の新聞をもっと楽しむアプリ - Google Play の Android アプリ

 スマホのカメラで新聞記事を撮ると、キーワード、関連記事、連載のバックナンバーなどの情報を表示するというもの。紙面を起点にしてより知識を深めたり、新たな発見をしたりすることができる。具体的には、アプリを起動し紙面の段(罫線と罫線の間)に合わせて写真を撮影すると、文字認識によって数秒で該当の記事を特定。その記事に付加されたメタデータである連載名や関連記事、キーワードなどを自動的に表示する。下の図は現在連載中の「私の履歴書」を撮影したところで、過去のバックナンバーをすぐ表示できたり、キーワードとして提示された「日立製作所」の、過去1年間の記事件数の推移を示すグラフや、最近の関連記事などを表示している。

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 記事マッチングの精度はなかなかのものだが、たまに全く別の記事がヒットしてしまうことがあった。新聞記事の書き方の原則として、文章の前から順番に重要な要素が盛り込まれるため、なるべく記事の前半を撮影すると記事認識の精度が高まるような気がする。

 いちばんの使い道は、連載を読んでいる時に「この前の回を読みたい」という時だろう。もちろん日経電子版にスマホかPCでアクセスすれば読めるのだが、アプリを立ち上げて写真を撮影するだけでバックナンバーが読めるのは便利だ。また、オフィシャルな使い方ではないだろうが、朝日や読売といった他紙の記事を撮影することで、同じ話題を日経がどう伝えているかを調べることもできる。個人的には、執筆者名を表示することで、気になった記事の執筆者が過去どんな記事を書いてきたか紙面から簡単に探せるようになるとより面白いと感じた。

 紙面を撮影することでより詳しいコンテンツを提供するというサービスは、ガラケー時代のQRコードから始まり、最近では「朝日コネクト」「読売ヨミとる」「毎日AR」といったアプリなど、地方紙を含め他紙でも数多く事例がある。

その中で「もっと日経」が革新的なのは、他紙がマーカーとなる画像を読み取らせ、それに対応したコンテンツを提供しているのに対し、文字認識によって記事を特定し、その記事に編集段階で付加されたメタデータを活用しているということだ。特別なイベント時にアピールするのではなく、日常の使い方の中で紙面とスマホの連携を提案している点で、開発側のユーザー目線を強く感じる。

 日経電子版の有料会員は、昨年1月に電子版の単独比率が50.1%とわずかながら紙との併読を上回り、今年1月の数字では単独比率が52.8%と拡大しつつある。「もっと日経」アプリの意図としては、紙のメリットを強調することで併読読者にも便利なサービスを提供し、併読の維持と拡大があるのだろう。「まだ紙にもできることはある」という創意工夫の執念を感じさせる取り組みだ。

無料会員にも今後、一部機能を提供することにより、紙との接点を少しでも広げようとする姿勢が見て取れる。スマホを通して紙面の価値を継続的に向上させる点で、他紙にも参考になるのではないだろうか。