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国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

西日本新聞、特設サイトで軍艦島の歴史を紹介 4K空撮動画や秘蔵写真を活用

 西日本新聞社および子会社の西日本新聞メディアラボは、長崎県長崎市の沖合に浮かぶ通称「軍艦島」(正式名称は「端島」)の歴史と魅力を伝えるウェブサイト「軍艦島アーカイブス - 明治日本の産業革命遺産」を4月20日にオープンした。

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 19世紀末から炭鉱開発が始まり、1974年の閉山とともに無人の島となった軍艦島。この史跡を、かつて居住していた方や西日本新聞が所蔵する貴重な写真と、ドローン(小型無線ヘリ)を駆使した4K(フルハイビジョンの4倍以上の解像度)で撮影された空撮映像でたどるコンテンツ。海から見たその姿が、当時近くの造船所で建造中の戦艦「土佐」に似ていたことから呼ばれるようになった軍艦島が、いかにして誕生し、そして無人化したのかを、全8話のストーリーで紹介している。

 PC版のプロローグではNHKの「映像の世紀」を彷彿させる重厚な音楽ともに軍艦島の映像が大きく映しだされ、画面を下にスクロールしていくと映像の上にテキストと写真が重なり、複合的な立体感や奥行きを表現している。なお、スマホタブレットでは映像とテキスト・写真は別々に表示されるため、PCで閲覧することをおすすめしたい。昨年の朝日新聞ラストダンス」や読売新聞「新幹線 半世紀の旅」のようなインタラクティブ性のあるウェブ表現に、西日本新聞軍艦島という“地域遺産”で挑戦し始めた。各地方紙にとっても地域の資源をどのようにPRすれば効果的か、今話題のドローンを使ってどんな映像が撮ればいいのか、大きな参考となるだろう。

 現在(4月28日)は第3話まで公開されており、第1話の「軍艦島の出現」では、江戸時代の島の発見から石炭の採掘による島の拡張、三菱による買収、住環境の整備、さらに「軍艦島」という名前が付けられた経緯などを解説している。今後毎週1話ずつ追加し、5月下旬に全話完結する予定とのこと。

 ドローンによる4K空撮動画は昨年の2014年11月2日にYoutubeで公開され、現時点ですでに37万回近く再生されている。Youtubeでは日本語だけでなく英語・中国語・韓国語でも紹介文があり、「Battleship Island」というクールな名前も影響しているのか世界中から視聴者を集めているようだ。Facebookページも2万5千人以上が「いいね!」をしており、まずはソーシャルメディアを通してコンテンツの拡散を図り、その後特設サイトを開設することで、発信力をより強化しようという姿勢が伺える。

www.youtube.com

 情報提供いただいた西日本新聞の方に質問したところ、この取り組みは西日本新聞メディアラボが主体であり、自治体や研究機関、企業等との共同ではない自主事業とのことだ。軍艦島世界遺産登録に向けてさまざまな手続きが進められている産業遺産でもあり、九州の地域振興につなげる狙い。Youtubeで海外からの反応も多いことから、ぜひ海外のユーザーでも楽しめるよう多言語での対応も考えたいとのことだ。

 西日本メディアラボは会社案内によると、今年4月1日に「メディアプラネット」から名前が変わったばかり。西日本新聞のウェブサイト制作やニュース配信といった仕事でなく、九州各地の病院や博物館、企業のウェブサイトの制作や、テレビ番組・コマーシャルの映像や法人のPRビデオの制作などの業務も請け負っている。親会社の仕事だけでなく、制作会社としてさまざまな業務をしていく上で、今回の取り組みはクライアントに対するコンテンツ制作力や情報発信力の大きなアピールとなるのではないだろうか。実験的な取り組みを通して技術や制作力の向上を図るとともに、制作実績のショーケースとしての役割もあるように感じた。