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edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

日経電子版、エバーノートとの連携開始 関連コンテンツを相互に提示

メモ


 3月16日、日本経済新聞電子版と、インターネット上に文書や写真などを保存・共有するサービスを提供するエバーノート(Evernote)の連携が開始した。日経電子版とエバーノートの双方で、キーワードや文脈に合った関連コンテンツを自動的に表示する。例えば電子版で記事を読んでいると、過去にユーザー自身が蓄積した情報の中から関連の深いものをリアルタイムで推薦し、情報収集や分析の効率化を目指している。ちなみにエバーノートは全世界で1億人以上、日本でも800万人以上のユーザーを持つ。

 サービスを全て使うには日経電子版、エバーノートともに有料会員になる必要があるが、サービスの開始を記念し6月末までは日経電子版の無料会員も利用できる。また、電子版の有料会員はエバーノートの有料サービス「Evernoteプレミアム」(月額450円)を1年分利用できる。エバーノートのユーザーが新規に電子版有料会員に申し込むと、通常より1カ月長い最大2カ月無料で利用できる。

[日経側の紹介]⇒Evernote連携ガイド Evernote連携を使って、日経電子版をフル活用しよう!
Evernote側の紹介]⇒日経電子版のコンテンツが、コンテキストに登場 - Evernote日本語版ブログ

 今回の連携は以下の3つの要素から成り立っている。せっかくなので4年ほど前に登録し、数カ月使って放置状態だったエバーノートを久しぶりに起動し、どんな機能なのか体験してみることにした。

  1. 関連ノート:電子版の記事下に自分がエバーノートに過去に作成・保存した文書から関連するものを提示する。
  2. コンテキスト:エバーノート上で保存した文書の内容に応じて、関連する日経電子版のコンテンツを提示する。
  3. Evernote保存ボタン:電子版の記事をEvernoteに最適化された形で簡単に保存することができる。

1.関連ノート

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 たまたま目についた「待機児童の実態 望まぬ育休延長とキャリア転落」を読んだところ、記事下に昔エバーノートに保存した日経ビジネスオンラインの「日本の未来が見える村(2009年2月の記事)」が提示された。関連記事の中で、村を挙げて子育てを支援し、出生率が2.04に上昇したなどの記述があり、これが関連していると判断されたようだ。電子版内部や他のウェブサイトではなく、自分が過去に保存したコンテンツが「関連記事」として同列に表示されるというのはちょっと感動である。例えば自分が子育て支援について取材するライターなら、「その後、この村はどうなっているのか」という着想をつかむことも可能だろう。検索では基本的に「今自分が知りたいこと」しか教えてくれないが、過去に保存したコンテンツとつながることで、新たな気づきを与えてくれる可能性は大きい。

 ちなみに次の「コンテキスト」はウォール・ストリート・ジャーナルやフォーブス、テッククランチといった英語メディアも対象になっているが、ニュースサイト上でユーザー自身の関連コンテンツを表示する機能は日経電子版が世界初とのことだ。

2.コンテキスト

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 エバーノート上で、ロケットニュースの「北陸トップクラスのデカ盛り寿司!」というグルメ記事を保存したところ、予想通り北陸新幹線関連の記事が次々にレコメンドされた。比較的新しい記事が多く提示されているような印象であり、元のコンテンツが特定企業について書かれた文書であれば、その企業の最新ニュースなどが表示されるようだ。また、自分の過去に保存したノートも関連の対象となるため、そこからも思わぬ気づきを与えられることもありそうだ。

3.Evernote保存ボタン

 スクラップしたい記事をボタン一発で自動的に保存できる。Evernote Web Clipperのようなブラウザ拡張ツールを使えばいいのだが、使ってみると非常に楽でストレスがない。ページ分割している記事も全文取り込んでくれるのは非常にありがたい。記事のベージ分割をしているニュースサイトはぜひ採用すべきだ。

 以上をまとめた紹介ムービーがこれ。
www.youtube.com

 3月18日には連携を記念した「日経電子版×Evernoteが創る次世代ワークスタイル」というイベントが日経本社であり、お招きいただいたので参加した。その中でエバーノートの方が繰り返し語っていたのが、これらの機能を通して「情報のノイズを減らし必要なものだけを届けたい」「コンテンツ同士の偶然の出会いや発見(セレンディピティー)を提供したい」ということだった。それを実現するためには、コンテンツの提供元が良質な記事を出すだけでなく、ユーザー自身がいかに良質なコンテンツを蓄積できるかも必要だ。今回の提携で日経電子版が、ユーザー自身の生産性を高めるサービスまで踏み込んだことで、「読む」だけから「使う」ためのサービスへと、着実に進化している。

 また、現在のところ関連ノートやコンテキストに表示されるのは日本語では日経電子版だけだが、海外は複数のメディアがコンテキストの提供元となっている。将来的に国内の他のメディアも提供元になりえるのか。気になったので質問してみたところ、日経との合同イベントということで答えづらそうではあったが、「エバーノートのユーザー層に合った専門性の高い媒体であれば可能性はある。例えば医療や法律、特許、会計といった分野の専門メディアなどが考えられる」との返事だった。エバーノート側からすれば、ユーザーの利便性を考えれば信頼できる提供元を増やすことについて「やらない理由はない」だろう。

 6月末まで無料で試すことはできるが、これらの機能を享受するためには、日経とエバーノートそれぞれに有料会員になる必要があり、正直一般ユーザー向けとは言えない。ただ、コンサルタントやライター、研究者やブロガーなど、大量の情報や資料と向き合い、常にコンテンツのインプットとアウトプットを求められる職種については、使い込むほど賢く便利になっていく可能性がある。これまで過去の資料蓄積はDropbox派であった自分も、これを機にEvernoteに転向しようかという気になった。PCやスマホアプリの動作や同期もだいぶ軽快になっている。

 昨年11月20日に日経が2000万ドルを出資して業務・資本提携することを発表し、今春からのサービス連携がアナウンスされていたが、発表から4カ月で正式リリースとなるスピード感はさすがだ。シリコンバレーの最先端企業と日本の伝統メディアが、共通の価値観を持って互いのユーザーの利便性向上のためのサービスを提供したことに、グローバルで戦っていくという日経の気概を感じる。とかく同業他社の動向ばかり気にしがちな新聞業界の中で、見えている景色が一社だけ違うようにすら感じた。

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