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北陸新幹線ウェブ特集に見る読売、朝日のコンテンツ制作志向の違い

 3月14日に長野から金沢まで延伸開業し、首都圏と北陸地方を一気に結びつけた北陸新幹線。50年越しの悲願を祝うかのように新聞やテレビでも大きく取り上げられ、ウェブサイト上でも力の入ったコンテンツが公開された。

 その中でも目を引いたのは読売新聞社が制作した「新幹線 北陸への旅」と、朝日新聞社の「北陸新幹線 駆けるつながる」である。いずれも長野から先の各駅への旅路をバーチャル体験できるコンテンツだが、それぞれに特色がありウェブ上での北陸への旅を異なったアプローチで楽しむことができた。

 まず読売新聞の「新幹線 北陸への旅」は、東海道新幹線開業50年に合わせ昨年8月に公開した「新幹線 半世紀の旅」に引き続き、各駅のトリビアを盛り込んだ。昨年と同様に、長野から金沢までの各駅間の車窓から撮影した風景をダイジェスト動画として組み込んでいる。ブラウザをスクロールして駅名を変更すると、それに合わせて画面左右に設けられた車窓の動画も切り替わっていく。実際に新幹線の席に座っているような感覚を味わうことができる。スマホ版では動画ではないが、画像を切り替えることで車窓の雰囲気は伝わってくる。ただし、トンネル区間はカットしているので、実際に乗った時と印象が異なるかもしれない。

 また、今回はJR東日本・西日本の協力を得て、運転席から撮影した動画も用意している。車窓の風景と運転席からの動画を同時に楽しむことができる。マウスやスマホをスクロールし、基本的に一直線のナビゲーションだ。

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 一方、朝日新聞の「北陸新幹線 駆けるつながる」は、長野からの先の各駅について、現地記者によるおすすめの観光スポット、グルメを紹介している。ただし、オープンなのは飯山駅までで、上越妙高駅以降は朝日新聞デジタルに登録、ログインが必要。スマホ版は下方へのスクロールのみだが、PC板は最新のブラウザであれば「動く地図」として表示され、読みたいコンテンツをユーザー自身が選んでいけるインタラクティブ性を重視したものとなっている。

 面白かったのは、全ての駅の空撮動画を用意し、上越妙高駅以外については全て発車メロディをBGMとして組み合わせていたことだ。金沢駅の発車メロディを有名音楽プロデューサーの中田ヤスタカ氏が手がけたことはよく報道されたが、飯山駅が「うさぎ追いしかの山」で始まる唱歌「ふるさと」、糸魚川駅が童謡「春よ来い」であるといった豆知識を、実際の音楽とともに知ることができる。

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 特徴的なのはPCで閲覧した際、読売が「ユーザーは基本的にスクロールするだけ」という、どちらかというと受動的なコンテンツ体験を定時しているのに対し、朝日はユーザーが見たいもの自由に選ばせ、滑らかな動きとともに次々に表示していくという、ユーザーの能動的なアクション求めているということだ。*1。両者のウェブメディアやユーザーに対するアプローチの違いが感じ取れて少し面白い。

 こういった表現や技術が生きてくるのは、今後本格的になってくる「ネイティブアド」の世界だろう。企業が伝えたい製品やサービスに込めたメッセージを、パソコンやスマホでどのように伝えていくのかを考える際、いかにユーザーにそのコンテンツに没入してもらうかが重要になる。

 そういった意味では両社のアプローチに優劣があるわけではなく、例えば中高年のように従来メディアに馴染んだ層には受動的に楽しめるコンテンツ、若者には能動的なアクションを求めるコンテンツなど、対象とる世代により有効な技法が用いられるようになるのではないだろうか。

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*1:「マップを非表示にする」に切り替えることで、スマホ版のように下スクロールだけのナビゲーションにすることも可能