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edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

沖縄タイムス「地図が語る戦没者の足跡」に特別賞 次世代ジャーナリズムの表彰イベント

 次世代を切り開くウェブ上のジャーナリズム作品を決める「ジャーナリズム・イノベーション・アワード」が24日法政大学であり、沖縄タイムスとGIS沖縄研究室(渡邊康志主宰)が制作した「地図が語る戦没者の足跡」が、エントリー38作品中2位を獲得した。データジャーナリズム分野の特別賞も受賞した。
 同アワードは日本ジャーナリスト教育センターの主催。法政大学社会学研究科共催。2014年にウェブ上で発表された新聞社や大学のメディア研究者らのジャーナリズム作品がノミネートされた。来場者の投票で上位5作品を選抜し、5作品のプレゼンテーションで最優秀作品を決定した。
 1位は首都大学東京渡邉英徳研究室の「台風リアルタイム・ウォッチャー」、3位はNHKネットデータファクトリーの「NHKインタラクティブニュース」が選ばれた。
 法政大学の藤代裕之准教授は沖縄タイムスの作品に「丁寧で、土地柄も生かした作品。ネットの時代になっても人に思いが伝わり、世界に発信できる取り組み」と講評した。
 「地図が語る戦没者の足跡」は沖縄タイムスのホームページから見ることができる。
本紙企画に特別賞 ジャーナリズムイノベーションアワード | 沖縄タイムス+プラス

 2014年にインターネット上で公開されたジャーナリズム作品に、来場者の投票で最優秀作品を選ぶイベント「ジャーナリズム・イノベーション・アワード」が1月24日法政大学市ヶ谷キャンパスで行われた。

 審査対象となる作品は、オンライン上に公開されたニュース、ルポ、解説、インフォグラフィクス、データ解析、写真、動画など表現手法は問わない幅広いもので、出品者が「ジャーナリズム」と考えるもの。自薦・他薦・主催者からの推薦など合わせ合計38作品が出品された。朝日新聞NHKといった大手マスメディアから、Yahoo!やハフィントン・ポストのようなウェブメディア、フリーランスのライターやジャーナリストなど、多種多様な作品が並ぶこととなった。イベントの内容や、最優秀賞を受賞した作品については以下の記事に詳しい。

[イベント概要]⇒次世代のジャーナリズムってなんだ!?――「ジャーナリズム・イノベーション・アワード」に行ってきた - Yahoo!ニュース スタッフブログ
[応募作品一覧]⇒ジャーナリズム・イノベーション・アワード 出展作品ラインナップ
[ツイートまとめ]⇒【第1回ジャーナリズムイノベーションアワード】ツイートまとめ - Togetterまとめ
[最優秀賞の作品]⇒台風情報と各地の災害情報をブラウザ上で視覚的にわかりやすく表示する「台風リアルタイム・ウォッチャー」 - GIGAZINE

 新聞社関連では、これまで当ブログで取り上げてきた日経新聞の「人口減少地図」や朝日新聞の「得票率の動くグラフ」、神戸の「阪神・淡路大震災 on Yesterscape」といったコンテンツが出品されていた。いずれもインタラクティブ性を備えた意欲的な作品だ。

 最終投票の結果、会場で驚きを与えたのが、はるばる沖縄から一人で参加した沖縄タイムスの「地図が語る戦没者の足跡」が、並み居る強豪の中38作品中2位となり、主催者の選定による「データジャーナリズム特別賞」を受賞したことである。

具志頭村「空白の沖縄戦」69年目の夏、戦没者の足跡をたどる | 沖縄タイムス+プラス

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 この作品は太平洋戦争の沖縄戦において激戦地だった沖縄本島南部の旧・具志頭(ぐしちゃん)村(現・八重瀬町)出身者の死亡地域を地図に落とし込み、戦没者の足跡をたどることを目的に作られたコンテンツ。沖縄タイムスデジタル部の與那覇里子記者と、GIS(地理情報システム)研究者である渡邊康志氏によって制作され、沖縄戦の終結から69年目の昨年6月23日に公開された。

 旧具志頭村では住民の4割にあたる2200人が戦死した。村が保有する戦没者名簿を入手し公開の許可を得て、米軍が沖縄本島に上陸した1945年4月から7月にかけての戦没者一人一人の死亡場所をGoogle Earth上に入力。そこに出身地や死亡時刻、年齢、性別といった情報を付加していく。これにより、時系列や出身地別で戦没地点を可視化できるようになった。海や山によって逃げ場を失い命を落とした住民が多かったことや、降伏後の7月も収容所で栄養失調やマラリアで亡くなった人がいたことが浮かび上がってくる。

 なお、今年は米軍が上陸した地点である本島中部・読谷村戦没者についてのデータを整備と分析を行っているそうだ。単に位置情報を入力すると言っても、70年前と現在では市町村区分や地名表記が混在しており、それを正規化して入力しなければならない。何千人分のデータを人力で整形していく必要があり、地道な作業の積み重ねであることが伺える。

 最終プレゼンでは、登壇した沖縄タイムス担当者の「これまで、戦争で生き残った方の証言を聞くことはできました。でも、この方法なら、亡くなった方の声も聞くことができるのではないか」という言葉が印象的だった。技術やビジュアルでインパクトを出す作品が多い中で、「本当に伝えたいこと」を、新たな視点で愚直に取り組んだことが、参加者の心に強く残ったのではないだろうか。

 最優秀賞に選ばれた「台風リアルタイム・ウォッチャー」のプレゼンでも、何百万もの人が災害情報をネット上に発信する“センサー”となり、それをネット上でリアルタイムに可視化する意義を「機械でなく『人間センサー』が、災害を減らせると確信している」という力強い言葉で訴えたように、「データ」ジャーナリズムという「理」の世界であっても、人の心を動かすためにはやはり「情」が不可欠ではないかいう感想を持った。