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国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

日経電子版にインタラクティブな人口減少地図 紙面連載と連動


 日本経済新聞電子版は9月24日、サイト上に「人口減少地図 統計でみる市区町村のすがた」を公開した。同日朝刊から開始した1面トップで人口減少を考える連載企画「人口病に克つ」と連動しており、47都道府県全ての市区町村町について、「2014〜40年における若年女性の増減」「2010〜14年の人口の増減」「各自治体ごとの小学校数」「各自治体ごとの医療機関数」を、ウェブブラウザで切り替えながら、ユーザー自身が見たい地域を選んで閲覧できるインタラクティブ性を備えている。

[完全版]⇒人口減少地図:日本経済新聞
[簡易版(スマホからはこちらを推奨)]⇒人口減少地図:日本経済新聞
[連載記事]⇒人口病に克つ :日本経済新聞
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 ネット上で大きな話題となったのが、出産に適した年齢といえる20〜39歳の女性の増減を示した地図。有識者グループである「日本創成会議」が今年5月に発表したデータを元にすると、日本の多くの自治体が、若い女性が現在の半数以下になることを示すオレンジ色から紫色に染まっており、特に北海道や東北、四国では7割以上減少する赤から紫で塗られた地域が目立つ。また都市圏でも軒並み2割から3割の減少が見込まれ、増加する自治体はごくわずか。日本創成会議は、2040年に若年女性が50%以上減る自治体を、女性が生涯に産む子どもの数が増えても人口を保てず消滅するおそれがある「消滅可能性都市」としており、全国のおよそ半数にあたる896の市区町村が該当するとしている。

[参考]⇒2040年、20~39歳の女性が50%の市町村で半減!日本創成会議が描く人口減少ニッポンの壮絶な未来――増田寛也座長に推計の狙いを聞く|ダイヤモンド・オンライン

 また、病院・診療所数や小学校数のデータも「過疎地域の今」を知る上で非常に役に立つ。例えば山間部では小学校が一つしかない自治体がいくつかある。九州や四国には医療機関が一つもない自治体もあることがわかる。

 さすがに全都道府県の市区町村データを詰め込んでいるため、動きはスムーズではなく、スマートフォンで見るのは少々つらい。制作側もそのことは承知しているようで、動作の軽い簡易版も用意されている。詳細データを見るのでなければこれでも十分伝わってくるが、スマホユーザーには最初から簡易版を表示した方が良かったようにも思う。

 いわゆる「データの見える化(データビジュアライズ)」として意欲的な作品だ。1面トップで展開する連載にふさわしい社会へのインパクトを備えたウェブコンテンツと言えるだろう。読者は紙面で記事を読むことで人口減少社会の実態を知り、実際に人口減少地図を使って自分の住む地域の人口が今後どうなっていくか知り、危機感をより身近に感じることができる。25年後の日本の姿と言われてもイメージしにくいが、「25年後あなたが住む自治体の出産適齢女性人口は○%減少します」と言われれば、ことの重大さは読者の心により響くだろう。失望やあきらめもあるかもしれないが、具体的なアクションに繋がるかもしれない。

 紙面では全市区町村のデータを収容することはとても不可能で、特徴的な地点をピックアップして紹介するか、せいぜい都道府県別のデータを表形式で表示することくらいしかできない。しかし、ウェブであればこのように全市区町村のデータをビジュアライズして表示することもできる。

 また、ネットで「人口減少地図」が話題になることによって、連載記事「人口病に克つ」もより注目を集めることになる。記事とウェブコンテンツが相乗効果を発揮した好例と言えるのではないだろうか。

 個人的に面白いと思ったのが、Twitterfacebookのシェア数に10倍近い差があること。10月7日時点でTwitterが1,500弱、facebookが16,000弱と差が際立っている。スマホで少し見にくかったため、ライトユーザーが多いTwitterではあまりヒットしなかったか、より身近な問題として捉え、facebookの友人に紹介した人が多かったということだろうか。