地方紙でも進む読者向けデジタル紙面提供サービス 6月は5社が開始
業界紙を眺めていたところ、今月(2014年6月)は山陽新聞(1日)、北海道新聞(2日)、愛媛新聞(2日)、東奥日報(10日)、山形新聞(16日)の5社が、主に読者を対象に紙面イメージをインタネット経由で提供するサービスを開始した。読者限定か否か、無料か有料か、アプリかブラウザかなどで若干の差異はあるが、いずれの社もスマートフォンやタブレット、パソコンで新聞紙面を閲覧できるサービスを主軸に提供している。
こうした動きは全国紙でも顕著で、毎日新聞は昨年11月に「愛読者セット」を開始し、毎日新聞朝刊を購読してれば、パソコン・スマホ・タブレットで夕刊も含めた紙面を追加料金なしで閲覧できるサービスを提供している。朝日新聞も追いかけるように、主力の朝日新聞デジタルとは別のサービスとして、朝夕刊セット読者が無料で利用できる「特典電子版」を今年4月1日に開始。読売新聞も同日から読売プレミアムにて朝刊紙面の提供を開始し、全国紙5社全てでデジタル媒体で紙面を提供するサービスが始まった。
調べてみたところ地方紙でも昨年の年末ごろから、急速に同じようなデジタル紙面提供サービスの導入が進んでいることがわかったので以下にまとめた。なお、読者向けサービスではあるが、朝刊紙面イメージの提供がないもの(「中日新聞プラス」「なーのちゃんクラブ(信濃毎日新聞)」「新潟日報モア」「熊日プラネット」など)は対象から外した。表中の料金は税込の金額。「対応端末・形態」についてはPC=パソコン、SP=スマートフォン、TAB=タブレットを示す。
サービス名称 | 開始時期 | 対応端末・形態 | 購読者の料金 | 購読者以外の料金 | 紙面イメージ以外のサービス | |
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北日本新聞社 | Webun(ウェブン) | 2010年1月1日 | PC(ウェブブラウザ) | 無料 | 2,100円 | スクラップ機能、紙面未掲載の写真閲覧、動画ニュース |
琉球新報社 | 琉球新報電子版 | 2012年6月15日 | PC(ウェブブラウザ)/SP、TAB(アプリ) | 300円 | 3,075円 | |
山梨日日新聞社 | 山日プラスデジタル | 2012年7月1日 | SP、TAB(アプリ) | 1080円 | 設定なし | 電子夕刊(Web Sannichi Evening) |
神戸新聞社 | 神戸新聞NEXT | 2012年11月1日 | PC(ウェブブラウザ)/SP、TAB(アプリ) | 162円 | 3,780円 | 速報メール、動画、電子版独自コンテンツ、過去記事検索(1カ月50回まで) |
佐賀新聞社 | 佐賀新聞電子版 | 2013年8月1日 | PC、SP、TAB(ウェブブラウザ) | 112円 | 3,200円 | 動画、紙面未掲載の写真閲覧、記事のテキスト表示、検索機能、見出し一覧表示、切り抜きPDF表示 |
福井新聞社 | 福井新聞D刊 | 2013年11月1日 | PC、SP、TAB(ウェブブラウザ) | 800円 | 3,450円 | 電子版独自コンテンツ、速報メール、訃報、スポーツ速報 |
沖縄タイムス社 | 沖縄タイムスプラス | 2013年11月22日 | PC、SP、TAB(ウェブブラウザ) | 300円 | 3,375円 | 葬儀・告別式案内、過去記事検索(3年) |
中国新聞社 | 中国新聞アルファ | 2013年12月2日 | PC、SP、TAB(ウェブブラウザ) | 無料/300円 | 3,417円 | 記事検索(過去1カ月/1年)、動画、クーポン、紙面掲載以外の写真 |
京都新聞社 | 京都新聞デジタル版 | 2014年1月20日 | PC、SP、TAB(ウェブブラウザ) | 無料 | 設定なし | 速報メール |
岐阜新聞社 | 岐阜新聞電子版 | 2014年3月1日 | PC、SP、TAB(ウェブブラウザ) | 324円 | 3,306円 | 紙面未掲載の写真閲覧、クリップ機能、記事のテキスト表示、検索機能 |
河北新報社 | 河北新報オンライン デジタル紙面 | 2014年3月1日 | PC(ウェブブラウザ)/SP、TAB(アプリ) | 無料 | 設定なし | |
秋田魁新報社 | 秋田魁新報電子版(さきがけ電子版) | 2014年4月1日 | PC、SP、TAB(ウェブブラウザ) | 324円 | 設定なし | 記事のテキスト表示、検索機能、スクラップ機能 |
山陽新聞社 | 山陽新聞デジタル(さんデジ) | 2014年6月1日 | PC、SP、TAB(ウェブブラウザ) | 378円 | 3,780円 | 電子版独自コンテンツ、過去記事検索(1年)、メール速報、ジャンルカスタマイズ、クリップ機能 |
北海道新聞社 | どうしん電子版 | 2014年6月2日 | PC、SP、TAB(ウェブブラウザ) | 無料 | 設定なし | 速報メール、キーワード登録による記事収集、スクラップ機能 |
愛媛新聞社 | 愛媛新聞電子版 | 2014年6月2日 | PC(ウェブブラウザ)/SP、TAB(アプリ) | 無料 | 設定なし | 記事のテキスト表示、キーワード登録による記事収集、スクラップ機能 |
東奥日報社 | 東奥日報タブスマ | 2014年6月10日 | SP、TAB(アプリ)※Kindleも可 | 無料 | 設定なし(県外向け「東奥日報電子版」を用意) | |
山形新聞社 | やましんe聞(イーブン) | 2014年6月16日 | PC、SP、TAB(ウェブブラウザ) | 無料 | 設定なし(県外向け「山形新聞お届け電子版」を用意) |
このように地方紙でも導入が進んでいる背景には、全国の地方紙から出資を受ける共同通信社が、加盟社が共通で利用できる会員管理・課金システムの構築や紙面ビューアの提供を推進していることも大きな後押しとなっているだろう。共同通信のシステムを利用することで、単独開発では課題となるコストや技術的なノウハウを解決することができる。
また、一般家庭へのスマホやタブレットの普及に合わせて「紙の新聞を購読していれば電子版は無料」という形でのサービス強化の動きが強まってきたことも挙げられる。時代の流れでもあり、紙でもデジタルでも好きな方、好きな時に読者の読みたいデバイスで読んでもらえればよいが、これまで連綿と築いてきた販売店網を維持し、読者から料金を受け取るための手段として「紙の配達」を引き続き守っていきたいという考え方の新聞社が増えてきているのではないだろうか。