edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

毎日新聞、「新編集講座」をウェブ連載 紙面編集ノウハウや舞台裏を解説

 ニュースの価値判断をして「トップはこれ」と扱いを決める。出てきた原稿に見出しを付ける。紙面の割り付けを考え、端末機器を使って1ページを組み上げる。
 新聞社には「整理部」という部門があり、日々、膨大なニュースと格闘しながら、紙面を作っています。情報化の流れの中、名称は「情報編成総センター」(東京本社)「編集制作センター」(大阪、西部本社)と変わりましたが、読者が共感する紙面を作ろうとする心は、今も昔も変わっていません。取材記者が獲物を追うハンターなら、取ってきた材料をどう調理し、いかに見栄え良く盛りつけるか考える料理人が整理記者(編集者)です。今回、「新編集講座ウェブ版」を創刊し、編集者の打ち明け話を読者のみなさんにお届けすることとしました。突発事件が起こりドタバタで紙面を組みかえたこと、難しい原稿でいくら頭をひねっても見出しが付かなかったこと、お住まいの地域によって紙面内容が異なること、などなど。編集者の舞台裏をお話しすることで、毎日新聞にもっと興味を持っていただければ幸いです。
「新編集講座ウェブ版」ご案内 - 毎日新聞

 毎日新聞のウェブサイトで、3月28日から「新編集講座ウェブ版」という連載が始まっている。新聞紙面レイアウトや見出し付けを担当する「整理部」を長く勤めた著者の三宅直人氏が、自信の経験をベースに新聞づくりの舞台裏を紹介するという企画。おおむね2週間に1回更新され、現在第4回まで掲載されている。文章の途中まではテキストで表示されるが、「続きはこちら」をクリックするとPDFファイルで表示される。印刷して読むには便利だが、せっかくならテキストでも全文収録してほしいところだ。

新編集講座ウェブ版 - 毎日新聞

 第1回のタイトルは「突発事件 紙面は動いた」。2011年5月2日の夕刊締め切り直前に「ビンラディン容疑者死亡か」という大ニュースが飛び込み、どのように紙面での扱いが変わっていったのかを解説している。降版(締め切り)時間までわずか20分で紙面構成を大きく変えた早版から、他の記事の扱いを小さくしたりボツにしたりして大量の関連記事を収容した最終版まで、ダイナミックに動くニュース面の移り変わりを余すところなく伝えている。

 また、第2回は「もし毎日新聞が忠臣蔵事件を伝えたら」というテーマ。歴史上の出来事を題材に、事実を伝える1面と感性に訴える社会面の違いや、2面や3面には解説や背景、識者の見方など、一歩引いた記事が展開されることを説明。また、大石内蔵助の地元である関西向けは称賛と共感、吉良上野介の地元である愛知向けには怒りと批判を全面に出すなど、地域によって評価が異なることを念頭に紙面づくりをする必要があることを解説している。随所に浪花節的な要素が盛り込まれ、良くも悪くも今の新聞紙面がこのようなメンタリティに基いて作られていることが読み取れる。

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 毎日新聞は他にも自社の紙面審査委員会のダイジェストをウェブ上で公開するなど、新聞づくりの舞台裏の一部を公開することに積極的だ。「新聞社は紙面の結果で勝負すべきで、楽屋落ちの話を出すことにどれほど意味があるか」という意見もあるだろうが、「開かれた新聞」を標榜し、結果だけでなくプロセスも含めて読者に提示するという意識を強く感じる。

 以前であればこういったノウハウは、仮に文章化されたとしても、個人の引き出しや社内の資料庫にひっそりとしまい込まれていたのであろうが、オープンに発信されることで人の目に触れる機会も増える。多くの人にとって価値ある情報を発信することで、有形無形に得られるリターンも決して少なくないだろう。今後の連載も期待したい。