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edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

消費税率引き上げによる新聞発行部数への影響は?(追記あり)

メモ

 4月1日に消費税が5%から8%へ17年ぶりに引き上げられたのに伴い、多くの新聞社は消費増税分の転嫁による購読料金を改定し、読者に対して実質的な負担増を求めることになった。おおむね全国紙やブロック紙の朝刊・夕刊のセット版料金は3,925円から4,037円、朝刊単独版(統合版)は3,000円から3,093円となったが、これが部数にどのような影響を与えているのか、毎年4月のABC部数を、過去4年間分の数字を拾ってその推移を調べてみた。データは業界紙・新聞情報に月1回掲載される毎月のABC部数から。電子新聞の販売サイトである「新聞オンライン.COM」で購入可能

 なお、ABC部数とは「新聞社が販売店に送付しその原価を請求した部数」であり、実際に配達された部数ではない。配達されない分は「予備紙」として配達中のトラブルへの備えとなるが、その量が過剰になると「押し紙」「積み紙」などと呼ばれることになる。

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 上のグラフが全国紙の過去4年の部数推移。増減傾向をわかりやすく示すため、実数ではなく2011年4月の部数を100%としたときの増減率をグラフで表示している。読売・朝日・毎日の3紙はほぼ同じような推移であり、今年に入って減少幅が拡大していることがわかる。また、日経は一般紙に比べ減少幅が大きい。電子版の有料会員数が33万人を超え好調を維持する一方で、紙の落ち込みが他紙よりも先行して進んでいる(参考)。

 興味深いのは産経で、他紙が軒並み下落する中、2013年、2014年と4月の部数が唯一増加傾向にある。社を挙げて熱烈に応援する安倍内閣および自民党の追い風を受けているのか、中国や韓国との摩擦が表面化する国民感情が影響しているのか、積極的な営業行為を継続しているのか、理由はどのあたりだろうか。

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 続いて部数上位の地方紙を並べてみた。いわゆるブロック紙と呼ばれる中日・北海道・西日本については朝日・読売・毎日と同様に、今年になって減少幅が拡大しているが、全国紙よりもやや減少幅が大きい。ただ、神戸や中国のように、全国紙よりも減少幅が小さい社もある。

 特徴的なのは静岡新聞で、過去3年間ほぼ動かなかった部数が今年に入って大きく(約3万部)減少している。静岡新聞は一般日刊紙の中で唯一、消費税率アップに伴う購読料金の改定を行わなかった稀有な新聞社(参考)。値段を据え置いたのに大きく落ちたのは一見不可解だが、これは今年に入って部数が急に減少したというより、社の方針として増税を機に販売店に送る部数を実情に合わせて減らした(過剰な予備紙を整理した)と理解するのが妥当だろう。

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 全国の新聞社全体の部数推移もまとめてみた。全国紙合計は朝日・読売・毎日・日経・産経5社の合計部数、地方紙合計は日刊紙の合計部数から全国紙の合計部数を引いた数値である。やや地方紙の方が減少幅が小さいが、それでも今年になってから急落しているのは全体としても明らかになっている。

(追記:2014/8/7)
 ちなみに県紙レベルとなると、全国紙やブロック紙ほど部数が下落していない社も数多く存在する。地域としては北陸や北関東、山陰、九州、四国に多く、東名阪や札仙広福の都市圏から離れた地域ほど堅調に推移しているような感じだ。

 都市よりも地方のほうがまだまだ新聞との結びつきが強いということもあるだろうし、販売店の数自体が少なく発行本社の部数維持のコントロールが効きやすいという側面もあるのだろう*1。ただ地方紙全体でまとめると、部数の多いブロック紙や上位県紙に引っ張られるため、結果として全国紙とそれほどかわらない減少幅となる。

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 新聞の総発行部数は1997年頃をピークに長期的な減少傾向が続いているが、今年に入ってから大手紙(全国紙やブロック紙)を中心に減少幅が拡大しているように、消費税率の引き上げは発行部数に影響を与えていることは確実だ。実際に配達された数ではなく販売店に送付された数字であるため、発行本社がある程度政策的に部数をコントロールすることができ、表面的な数字を見ているだけではわからない面もある。とはいえ、長期的に見ていけば傾向は必ず現れることは間違いない。来年10月には8%から10%への再引き上げも予定されている。引き続き推移を追っていきたい。

*1:全国紙の販売店数は数千店に及ぶのに対し、県紙は数十店から多くても数百店程度