edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

河北新報がウェブサイト刷新 ニュース、コミュニティー、デジタル紙面の3本柱

 宮城県を中心とする地方紙・河北新報社は3月1日、新たなウェブサービス河北新報オンライン」を開始した。新サービスは、これまでのニュースサイト「河北新報 KOLNET」をリニューアルしニュースサイトの「オンラインニュース」、新聞読者限定の「デジタル紙面」、これまで運営してきた地域SNSの「ふらっと」に代わる「オンラインコミュニティー」の3つで構成されている。

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 オンラインニュースは、これまで2週間であった記事の公開期間を1年1カ月に延長。「昨年の今ごろ」のニュースや話題が閲覧できるようになる。また、トップページに表示する記事や写真、情報は厳選し、すっきりとした表示となっている。

 「デジタル紙面」は、無料の会員登録すればパソコンのほかタブレットスマートフォン用アプリ「河北新報」をダウンロードすることで紙面のイメージをいつでもどこでも読めるようになる。公開されるのは朝刊最終版と夕刊、別刷り特集紙面など1週間分。朝夕刊セット読者は朝刊夕刊の両方、朝刊単独の読者は朝刊のみとなる。

 「オンラインコミュニティー」は、「あなたの発信がきっと誰かの役に立つ」を合言葉に、ユーザーと新聞社がともにつながりの輪を広げていくプラットフォームを目指す*1。自分のブログに他のユーザーのブログや記事が結びつく「レコメンド」と、お気に入りの記事や写真をまとめて他人に紹介できる「スクラップブック」と名付けた機能を備える。また、編集室スタッフが選んだブログを、河北新報本紙やフェイスブックツイッターなどで積極的に紹介する。

 旧SNS「ふらっと」では、ブログの公開範囲を「会員のみ公開」や「友だちのみ公開」など複数選択できたが、オンラインコミュニティーは、全てネット全体への公開となる。コメントは必ず受け付け、書き手と読み手の双方向性を強める(コメントできるのは会員のみ)。「デジタル紙面」とは異なり登録において新聞読者である必要はないが、本名での登録を奨励している。

 ロゴマークは、「ONLINE」の「O」をベースに、新聞社が介在する人と情報のつながりを意味する「輪」。ニュースは河北新報社のコーポレートカラーであるブルーを基調とし、コミュニティーは人が集うぬくもりをイメージしたオレンジ。ニュースとコミュニティーの連携・融合を目指すサイトの理念を体現するため、色違いの同じ図柄とし、サイト全体の統一感を持たせている。

 こちらの「河北新報オンライン 3月1日スタート」の紹介ページからは、この新サービスの目指す方向性と理念が強く伝わってくる。特筆すべきは、「デジタル紙面」は既存新聞読者への優遇であるのに対し、「オンラインニュース」と「コミュニティー」は徹底したオープン志向が貫かれていることだ。最近では地方紙各社が次々に新聞読者を対象にした会員制サイトを構築しており、河北新報も「デジタル紙面」という形でその傾向に対応しているが、インターネットの基本である“オープン”にこだわったところは河北新報ならではの視点といえる。

 インターネットが普及し、東日本大震災によって一層強まったと言える地方新聞社の役割として、「地方と全国、世界をつなぐ」というテーマがある。新聞読者のみを対象にしたクローズドなサイトは、既存読者の満足度を向上させ、新聞社との結びつきを強める働きはあるが、読者でない人への広がり薄くなってしまう。全国の東北に関心を持つユーザーを引きつけるためにはオープンである意味は大きい。あの未曾有の震災を目の当たりにしたからこそ、人と人とをつなぐツールとしてのインターネットの意義をどこよりも強く感じたのではないだろうか。

 少し思ったことといえば、コミュニティーの登録については、メールアドレスのみで登録できるならば、FacebookTwitterによる認証を利用しても良かったのではないだろうか。既存のソーシャルメディアアカウントをそのまま使えたほうが、ユーザーの利便性やソーシャルメディアとの連動性がさらに上がったように思う*2

[参考]⇒何で日本の新聞のウェブサイトって会員登録させる時にソーシャルログインとかサポートしないんだろか? | ホリエモンドットコム

 また、震災半年後の2011年9月11日にライブドアとの協業で開設したオピニオンブログ「オピのおび ふらっと弁論部」については、今回のリニューアルで特に触れられていないが、こちらはどうなるのだろうか。ブロガーによる記事の更新続いているが、「事務局からのお知らせ」は2012年9月11日で最後となっており、河北新報オンラインのトップページからリンクすら貼られていない。こちらも理念自体はしっかりしていたのだから、今後の方針についてのアナウンスがあってもいいように思う。(※追記あり)*3

[参考]⇒河北新報の地域特化オピニオンブログ「オピのおび ふらっと弁論部」 - edgefirstのブログ

*1:構築を担当したのはシナジーマーケティング株式会社(リリース

*2:(追記 2014/3/4) 近いうちに実装予定ありとのこと。こちらの「お問い合わせの多かった項目とそのご回答」の7番目を参照

*3:3月24日に事務局からのお知らせが更新され、年度末の2014年3月31日をもって閉鎖されることが発表された。