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朝日新聞、あらゆるウェブ表現を駆使した「浅田真央 ラストダンス」公開

 朝日新聞は2月22日、フィギュアスケート女子・浅田真央選手のこれまでの足跡を振り返るコンテンツ「浅田真央 ラストダンス」を公開した。
 
浅田真央 ラストダンス - 朝日新聞デジタル
20140223103909
 
 浅田選手が3歳の頃からソチ五輪の舞台に至るまでを、写真スライドショー、テキスト、アニメーション、コーチへのインタビュー動画、データグラフィック、音楽など、ウェブ上で表現できるあらゆるコンテンツを駆使して構成されたマルチメディアコンテンツである。PC、スマートフォンタブレット端末で閲覧可能で、公開から2日目の2月23日時点で、facebookの「いいね!」が4万を超え、Twitterでの言及数も8000を超えるなど、大きな反響となっている。

 こういった表現手法は、米ニューヨーク・タイムズが2012年2月にワシントン州で起こった雪崩を、大きな写真と動画、CGなど大胆なレイアウトを駆使してまとめた「スノーフォール」が先駆。2013年には、現代の競馬において世界一の通算勝利数記録を持つカナダ人騎手ラッセル・ベイズをテーマに、ノンフィクションとドキュメンタリー映画をミックスさせた構成に仕上げた「ジョッキー」を第2弾として公開した。

 また、英ガーディアンも2013年1月に発生した豪タスマニア州の大規模山林火災の模様を、ある家族の体験を軸に、テキスト、音声、写真、動画で再構成するマルチメディアドキュメンタリー「ファイアーストーム」を公開している。朝日もこういった海外先行事例に続いたのだろう。このような取り組みは、読者にテキストや写真のみのコンテンツより深い体験をもたらすため、「イマーシブコンテンツ」(イマーシブ【immersive】は「没頭」を意味する名詞イマージョン【immersion】の形容詞形)と呼ばれることがある。

 五輪前から準備してきたのだろうが、2月21日未明に行われた競技の結果を盛り込み、翌日に公開したスピードとクオリティはすさまじい。先に例示した「スノーフォール」は6カ月、「ファイアーストーム」は制作に3カ月を費やしたそうだ。制作の一人としてクレジットされている朝日新聞デジタル編集部の古田大輔記者がTwitterで制作の模様をツイートしている。


 コンテンツ構成力と制作のスピード感を示すショーケースとして、朝日の格好のアピールとなったのではないだろうか。同業他社はもちろん、ネットメディアが真似しようと思ってもなかなか難しいだろう。紙に留まらない、ネットならではのリッチな表現を目指し、貪欲に挑戦し続ける制作スタッフの思いが結集している。これが「ジャーナリズム」と呼べるかどうかは議論が分かれるところだろうが、読者の心に深く残る表現方法となったことは間違いない。

(追記)制作に関わった古田記者が自身のTwitterで制作の舞台裏を紹介している(Toggeterによるまとめ)。やはりニューヨーク・タイムズの「スノーフォール」を意識したとのこと。新聞社の強みである記事と写真のデータベースの蓄積を生かし、事前準備をしっかりした上で、さまざまな部署が関わりあって作り上げた様子が綴られている。