edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

雑誌協会、スポーツ紙とヤフーにスクープの発売前無断使用中止を申し入れ

 日本雑誌協会(雑協)は1月25日、スポーツ新聞などが、週刊誌の早刷りや、広告審査のための宣伝物原稿をもとに、取材・加工、剽窃(ひょうせつ)して、雑誌の発売前や発売日当日に、紙面掲載する事例が多数あることを憂慮、雑誌取材委員会(鈴木章一委員長・講談社)と加盟社10社13誌の雑誌編集部の連名で、スポーツ新聞6紙などにこうした行為を止めるよう申し入れた。2月20日に開いた理事会・例会で報告、翌日の記者会見で明らかにした。
 雑協が申し入れを行ったのは、スポーツ報知、日刊スポーツ、サンケイスポーツ、デイリースポーツ、東京中日スポーツの6紙とヤフー。雑協としてこうした申し入れを行うのは、今回が初めてだという。
 (2013年3月4日付文化通信より)

 業界紙では文化通信しか取り上げておらず、日本雑誌協会のウェブサイトにも3月5日現在掲載されていないが、結構重要なテーマだと思うのでメモしておきたい。
 申し入れの内容は、雑誌の発売前ないし発売日当日にスクープ記事を報じることを止めて欲しいというもの。具体的には、「○日発売の週刊●●によると…」という書き出しで始まる記事で、実際にスクープした週刊誌を買わなくても内容を把握してしまうようなことを止めてほしいという趣旨だろう。確かにスポーツ紙の芸能ニュースでのスキャンダル記事や恋愛・破局報道などはこういうスタイルで書かれている記事が多い印象がある。
 該当紙の購入は電子版新聞購入サイト「新聞オンライン.COM」にて1部あたり900円で可能(要クレジットカード)。ただし、元記事は1面に掲載されており、「立ち読み」として無料で閲覧できる。
[購入サイト]⇒文化通信 2013年3月4日 - 電子版新聞の販売・購読ポータルサイト - 新聞オンライン.COM
 さらにスポーツ紙だけでなくポータルサイトのヤフーを指名して同じ申し入れを行なっていることは注目。前出の文化通信の記事はこの部分もかなり詳しく報じている。

 また、ヤフーに対してはこうしたニュースが各誌のサイトに載る前に、スポーツ紙のサイトに雑誌からの引用として掲載され、それがYahoo!JAPANのニュース配信のトピックスに掲載されるケースが「多数見受けられる」としている。
 さらに、こうしたスポーツ紙のニュースが「Yahoo!JAPANのニュースコーナーでは、スポーツ新聞各社のオリジナルニュースとしてトップ配信をされ、本来のオリジナルニュースである私どもの公式Webサイトでの配信記事が、関連記事扱いをされてしまっている」と問題視(中略)
 また、ヤフーニュースで取り上げれると、アクセス数が増加し、アフィリエイトからの報酬なども発生することから、剽窃などによる記事配信で収益を得ていることに対しても批判している。
(2013年3月4日付文化通信より)

 以上のようにかなり具体的に踏み込んで批判している。わかりやすく言えば、「どうせヤフトピに取り上げるなら、ネタをパクったスポーツ紙ではなく、雑誌社が配信している記事や雑誌の公式サイト側にリンクを貼れ」ということなのだろう。確かにここ数年、小学館のNEWSポストセブンや扶桑社の日刊SPA!など雑誌社も自社の記事をウェブに積極的に配信しているし、週刊文春などはスクープを出す際、発売日前日夜にネット上で簡略版記事をリリース⇒夜にネットで話題に⇒ヤフトピに拾われる⇒雑誌発売、という流れを意識的にやっている。このように雑誌社もウェブへの記事配信を積極的に行なっている今、ポータルから自社記事へのアクセス数をいかに稼ぐかということも重要なテーマとなっていることが影響しているのだろう。
 ちなみに、この件については日刊サイゾーが少し前に内情を書いている。それによると、スポーツ紙が各誌の編集部に掲載許可の承諾を取って記事を掲載するという“紳士協定”があったが、度重なる無断使用に業を煮やしたフライデーが各スポーツ紙に早刷りの利用禁止を通達。他の雑誌も足並みを揃えて申し入れすることになったとのこと。
[参考]⇒「スポーツ紙にタダで“ネタ”を提供するのはおかしい」部数減に悩む各週刊誌が下した決断(日刊サイゾー) - エキサイトニュース
 ウェブではオリジナルの記事に“ネット上の反応”を少し付け加えて新しい記事に仕立てるようなニュースサイトは数多く存在するし、2ちゃんねるまとめサイトやNAVERまとめのように、オリジナルの記事を「編集」することによって多くのユーザーを集めることに成功しているサイトもある。それに対して既存マスメディアは「額に汗して作られたコンテンツが勝手に金儲けに利用されている」と憤るが、実はスポーツ紙がその媒体力を利用して昔から同じようなことをやってきたわけで、どっちもどっちなのかもしれない。
 とはいえ、前出の日刊サイゾーの記事後半でも書かれているように、スポーツ紙と雑誌社において“持ちつ持たれつの関係”があったことも事実だろう。オリジナルの価値、編集の価値はそれぞれあり、どちらかが絶対というものではない。「正義がどちらにあるか」のような議論ではなく、こうした問題提起からどのような折り合いをつけていくかに注目していきたい。