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国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

信濃毎日と鉄拳のコラボ動画「家族のはなし」に注目の印刷技術

信濃毎日新聞社広告局は創刊140周年を記念し、地元・長野県大町市出身の人気お笑い芸人・鉄拳が制作した新作パラパラ漫画(動画)『家族のはなし』を、11月17日の「家族の日」に発表した。
鉄拳作品史上最多の1918コマ、最長の約10分の大作となっている。
『家族のはなし』は、信州と都会を舞台にした鉄拳さんの自伝的作品で、信州のりんご農家の息子が上京し、ミュージシャンを目指すものの挫折、帰郷して両親の愛情に触れ、再び歩み出すというストーリー。
「家族は、面倒くさい幸せだ。」がメインコピーで、新聞がお茶の間に置かれるものであることから、家族の日常と共にあり、家族や地域を結びつけるものとしてとらえた。
また今回は、新聞とのコラボであることを意識し、通常のパラパラ漫画とは異なるアニメーション手法を採用。
漫画の一コマ一コマを新聞印刷機に実際に印刷しながら、印刷スピードに合わせてカメラのシャッターを切り、コマドリで撮影した。広告会社はフロンテッジ。
信濃毎日新聞が創刊140周年で鉄拳とコラボ 新聞紙面使ったオリジナル動画を公開 #ブレーン | AdverTimes(アドタイ)

 11月17日に公開された信濃毎日新聞とパラパラ漫画で有名な芸人・鉄拳のコラボムービー。11月22日現在で再生回数は43万回を超え、Twitterやブログ、ネットメディアで大きな反響を呼び、「涙腺が弱い人は閲覧注意!!」「子を持つ親なら誰しも涙してしまいそう」といった感想がアップされている。

鉄拳「家族のはなし」(新聞印刷機アニメーション) - YouTube

[特集ページ]⇒信濃毎日新聞創刊140周年記念 鉄拳「家族のはなし」

なお信濃毎日新聞の11月17日別刷り紙面には、動画で使われた全コマが掲載されている。ずらりと並べられた1918コマは壮観だ。
[画像]⇒鉄拳 新作「家族のはなし」のアニメがすごい - NAVER まとめ

古い新聞スクラップが浮かび上がらせる「家族の絆」をモチーフにしたストーリーの温かさや、1918コマにおよびパラパラ漫画のクオリティの高さはいまさら言うまでもないので、当ブログで注目したいのがその撮影手法。手書き原稿を撮影するのではなく、実際の新聞印刷機でパラパラ漫画が印刷行われている場面を、1秒間のコマ数とカメラのフレームレート、印刷スピードを厳密に調整し撮影したという。

業界の人であれば「あれっ、新聞の印刷機って原版となる刷版を作るから、1枚1枚別のコマを印刷するのは不可能じゃないの?」と思うかもしれない。自分も最初はそう思っていたのだが、メイキング映像を見たところ今回撮影に使用された印刷機が東京機械のジェットリーダー1500であることを知って納得がいった。

(ジェットリーダー1500 東京機械製作所ウェブサイトより)

これはインクジェットプリンターの親玉のような印刷機であり、毎分150mの速度で印刷が可能。インクジェット方式であり刷版を作らないため、1枚1枚異なったページを印刷することができる。すでに国内でも試験導入されており(参考)、既存のオフセット輪転機に比べ格段に小さいため、設置場所も今までの工場のような大きなスペースを取る必要がない。新聞紙以外の紙にも印刷できるため、稼働率向上も期待できる…などなど、現在注目の印刷技術である。

この印刷機を使えば、理論上は読者に対して1枚1枚異なった紙面を届けることが可能だ。例えばランダムな文字列を紙面に印字することによる「宝くじ」を実現したり、受け取る世帯ごとにランダムな運勢を記載することもできる。また、届ける地域によって掲載する広告をさらに細分化するといったことも可能だろうし、配達する販売店が読者の誕生日を知っていれば、「お誕生日おめでとうございます」と印刷された広告が含まれる紙面を配達するなんてこともできるかもしれない。