edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

朝日新聞、10月からヤフーニュースに記事配信 全国紙3社が揃う

 朝日新聞が10月3日から、インターネットニュースサイト「ヤフー・ニュース」に「朝日新聞デジタル」名義で記事の提供を始め、新聞業界に波紋を広げている。これまで堅持してきたネット上においては自社媒体以外ではニュースは見せないという「純血主義」を放棄したからだ。関連リンクなどによりヤフー側から「送客」を得ることで、不振が続く電子媒体、朝日新聞デジタルの認知度を高め、ページビュー(PV)の増加、さらには有料購読者増につなげたいとの狙いがある。
「危険な賭け!」朝日新聞がヤフーにニュース配信:FACTA online

 かなり昔の話ではあるが、最近ヤフートピックスで朝日新聞デジタルの記事が取り上げられるケースが増えてきたのでメモ。
 朝日新聞が10月3日より国内最大のニュースサイトであるヤフーニュースに記事配信を開始した。配信する記事は、朝日新聞デジタルで無料で読める速報記事から1日40本程度を提供。記事の保存期間はおよそ2週間とみられ、写真も200枚程度が掲載されている。提供した記事の本文下に「関連記事」の見出しを数本置き、それをクリックすると朝日新聞デジタルの記事へリンクするという仕組み。
 ヤフーニュースには100社を超える報道機関や出版社が記事を提供しており、大手紙・通信社では読売、毎日、産経の各新聞社と時事通信が記事を出している。今回朝日新聞が加わったことで、朝日、読売、毎日の3大紙がヤフーニュース上に揃ったことになる。ちなみに記事を提供していない社としては日経新聞共同通信、ブロック紙の北海道新聞中日新聞東京新聞などがある。
 なお、FACTAの元記事には朝日のこれまでの姿勢として「自社媒体以外ではニュースは見せないという『純血主義』」とあるが、gooニュースにはかなり昔から記事配信をしているし、楽天インフォシークニュースやニコニコニュースなどにも記事を配信しているので、事実と異なる部分もある。
 ヤフーニュースとしては3大紙が揃ったことで、日本のニュースサイトとしての地位は揺るぎないものになったと言えるだろう。事実、ヤフーニュースに配信された中から選りすぐりの記事を掲載する「ヤフートピックス」でも朝日新聞デジタルの記事を見ることが多くなった。コンテンツの充実およびブランド力の強化という意味で、これ以上ない成果が上がったように思える。
 朝日としても記事提供料と関連記事経由で流入するPVは無視できないレベルだったと推測される。昨年3月の東日本大震災直後、一時的に朝日新聞がヤフーニュースに配信していた時期があったが、それによる朝日のPV増加効果はかなりのものであったらしい。少し前のデータだが、毎日.jpへのアクセスの約5割がヤフーニュース経由だったという調査もある。ヤフーに提供する記事は朝日デジタルで無料で読める部分であり、その部分の露出をできる限り広め幅広いユーザーにリーチすることで、さらに深い内容を求める層を有料会員へと誘導する意図が感じられる。
 とはいえ、有料会員増加に苦しむ朝日のなりふり構わぬ収入増加策と見て取れなくもない。先日の新聞大会での木村社長の発言によると、現在の有料会員数は5万から6万人の間で、なんとか来春に10万人にもっていきたいとのことだった。有料会員の勧誘営業をテコ入れする一方で、依然拡大が続くネット広告も無視できないというジレンマに陥っているのではないだろうか。
 ちなみに、ちょっと心中穏やかではないのが産経・毎日・時事といったこれまでヤフーニュースに記事を提供してきた各社かも。ヤフーへの記事提供料はどうも記事1本いくらの固定料金ではなく、ヤフーニュース上で何回見られたかというページビューに比例する料金体系らしい(こちらの本の中で料金体系やコンテンツ提供社との交渉の一端が明かされている)。朝日という強力なライバルが増えることにより、自分たちのPVが相対的に落ち、これまで受け取ってきた料金や、自社サイトへの送客にも影響が出てきているのではないだろうか。