山陰中央・十勝毎日読者もプラス1000円で朝日デジタル購読可能に
朝日新聞の電子版「朝日新聞デジタル」を、山陰中央新報(本社・松江市)と十勝毎日新聞(本社・北海道帯広市)の購読者も月額1千円で利用できるサービスが、6月からスタートする。対象となるのは、山陰中央新報は島根、鳥取県在住、十勝毎日は北海道在住の購読者。
朝日新聞社はすでに、山陰中央新報社と新聞販売で、十勝毎日新聞社とは印刷などで協力関係にある。さらに今回、両社とデジタルを含む幅広い分野で協力を進める提携基本合意書に調印した。
朝日新聞デジタルの購読料は月額3800円(デジタルコース)。朝日新聞を宅配で購読していれば、紙の購読料プラス月額1千円(ダブルコース)で利用できる。
昨年9月からダブルコースの対象を、沖縄タイムス(本社・那覇市)の購読者に拡大。今回で、デジタル提携する地方紙は計3社になる。
⇒朝日新聞デジタル:朝日新聞デジタル、新たに2紙提携 山陰中央・十勝毎日 - 経済
2011年9月より、沖縄タイムスの定期購読者が1000円で朝日新聞デジタルを利用できるサービスを開始した(参考:料金のご案内)。朝日新聞以外の読者でも電子版を割引価格で利用できるサービスということで注目を集めていたが、6月から島根県の県紙である山陰中央新報と、北海道十勝地方を中心とする十勝毎日新聞の購読者も同様のサービスを受けられるようになる。
料金の徴収は、朝日新聞デジタルの部分(1000円)はクレジットカードで、新聞の購読料金はこれまで通り販売店に支払うという形式。地方紙を購読していれば、通常3800円の電子版料金が1000円になる権利があると考えるとわかりやすい。ただ、朝日新聞デジタルの併読者が地方紙の購読を止めたら料金を元に戻す必要がある。つまり、地方紙の販売店の立場からすると、申し込み時だけでなく毎月朝日新聞社から読者確認を求められることになる。申込時や毎月の確認時に手数料なども払われるのだろうが、この「他社のための読者確認」を徹底するのは苦労があったことだろう。
狙いは新聞好きの読者に「全国紙と地方紙の併読を今一度」といったところか。インターネットがまだ存在せず情報へのアクセス手段が限られていた時代、家庭で複数の新聞を購読するのは珍しいことではなかった。日本新聞協会による「日刊紙の都道府県別発行部数と普及度」を、過去にさかのぼって調べると*1、今から30年前の1世帯あたりの平均部数は1.3で、計算上3軒に1軒は2紙購読していたことになる。東京や大阪では2軒に1軒の割合だ。
調査年月 | 合計部数*2 | 世帯数*3 | 1世帯あたり部数 | 1世帯あたり部数(東京) | 1世帯あたり部数(大阪) |
---|---|---|---|---|---|
1981.10 | 47,256,150 | 36,346,662 | 1.30 | 1.52 | 1.62 |
1991.10 | 52,026,372 | 41,797,445 | 1.24 | 1.38 | 1.40 |
2001.10 | 53,680,753 | 48,015,251 | 1.12 | 1.17 | 1.21 |
2011.10 | 48,345,304 | 53,549,522 | 0.90 | 0.85 | 0.93 |
2000年から2011年の推移はこちらのページにまとまっているが、この10年で1世帯あたりの部数は0.2も落ちた。インターネット接続料金や携帯電話のパケット代など、新たな情報通信の費用が家計に加わり、新聞に割くだけの余裕がなくなったというのが理由だろう。中高年層など、できれば地元の新聞と全国紙を取りたいが、そこまで家計に余裕がないという世帯に対し、プラス1000円という割安感をアピールするという戦略ではないだろうか。
今回新たに地方紙2紙が加わったことで、今後も提携関係のある地方紙を中心に電子版併読を広めていくことになるのだろう。最近、朝日・読売の大手2社は地方紙への提携の動きを急速に強めている。地方紙連合の盟主としての共同通信社の動きが注目される。