edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

日経、「アジア経済新聞」を有料電子媒体で計画中か

 先月号の月刊誌FACTAからメモ。

 日本経済新聞社は「アジア経済新聞電子版」を創刊する構想を明らかにした。米有力経済紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)のアジア版に対抗し、アジア全域をカバーする基幹電子媒体をつくる。12月7日に創刊した週刊の英文アジア情報「ザ・ニッケイ・エイジアン・レビュー」(NAR)を拡充し、デイリー化、24時間化することで実現を目指す。NARは現在無料だが、「アジア経電子版」は購読料と広告料を徴収する方針だ。日本の内需縮小とアジア新興国の目覚ましい発展に伴い、日経の収益源だった「紙の新聞」の広告収入は減少の一途。大手企業がもたらす広告のうち、半分程度が海外市場に流出している。このため、アジアでの広告外需を取り込む受け皿として「アジ経電子版」を活用する。
「アジア経済新聞電子版」を創刊する日経新聞の狙い:FACTA online

 この記事の中で出てくる「The NIKKEI Asian Review(ザ・ニッケイ・エイジアン・レビュー)」(NAR)は、2011年12月にiPadで読む英文の週刊誌としてリリースされたアプリ。中国、インドなど成長著しいアジア経済を、アジア全体の視点から編集している。毎号、独自の巻頭特集に加え、日本経済新聞社日経BP社など日経グループの新聞と雑誌からアジア関連の解説記事やオピニオンを厳選しているとのこと。当面はキャンペーン期間として、全ての記事を無料で提供している。
[アプリダウンロード]⇒The NIKKEI Asian Review for iPad on the App Store on iTunes 
 また、Facebook上でもページを開設し、英文による情報発信を進めている。すでに2万8千を超える「いいね!」を獲得しており、海外のFacebookユーザーからも反応を得ているようだ。「ノート」では、iPad版に掲載した記事の一部が転載されている。
Facebookページ]⇒The Nikkei Asian Review | Facebook
 ちなみに日経は3月29日の機構改革で、社内にグローバル事業局を新設し、対外情報発信室と国際事業本部の業務を移管することを2月22日に発表している。今年は海外事業にも力を入れていくという姿勢の表れだろうか。
[リリース]⇒人事異動のお知らせ(PDF)
 FACTAの元記事は、「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)やファイナンシャル・タイムズ(FT)との差をアジアの現地企業にどうアピールするか。日経の取材網は両社に比べれば貧弱であり、腰を据えた現地化が必要」と結ばれている。確かに、10年以上前からアジア版を発行している先行社に比べれば、いかに"NIKKEI 225"という日本の代表的な株価指数をブランドとして持っているとはいえ、広告にしろ購読料にしろ収益を上げるのは並大抵のことでは達成できないだろう。
 ただ、縮小均衡で守りの姿勢に入るだけでは社内の雰囲気も悪くなる一方であり、海外に進出して新たなフロンティアを持つという方針を掲げるのは決してマイナスにはならないだろう。紙を発行し配達することを考えれば、電子媒体であれば比較的安価で構築でき、参入の障壁は以前に比べればだいぶ下がっているはずだ。
 また重要なのは、英文で情報を発信することにより、グローバル視点で記事を書くという意識が醸成されることと思う。経済がグローバル化し、国境が意味をなさなくなりつつある中、日本だけではなく全世界に向けて書くという意識が経済紙には必要になってくるのだろう。NARのFacebookページを眺めていても、中国やインド、ヨーロッパ諸国など全世界から反応が寄せられていることがわかる。そういった意識を養っていくための一つの象徴としての海外進出のように感じた。