edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

朝日・日経・読売の「あらたにす」終了 後継サイトは学生スタッフ中心


 3月1日の午前0時をもって、朝日・日経・読売の新聞読み比べサイト「あらたにす」が閉鎖され、上記のようなシュールな画像が表示されている。外注に回す余裕もなく、やっつけで作ったような感じだ。“ホームページビルダー”のようなhtml作成ソフトを初めて使ったときにとりあえず作ってみたページを思い出す出来栄えだ。
 昨年11月に出たリリースでは「2012年春に終了」となっていたが、2月末で閉鎖ということになった。なんだか一刻も早く閉じたかったような印象が伝わってくる。2008年1月のオープンから4年と、ウェブの世界では短命とも言えない運営期間だった。
 終了するとはいえ、アクセス数は2011年9月でユーザー数27万、ページビューは560万(Google Ad Plannerによる数値)と、PVベースではそこらへんの地方紙に比べれば上回っていた。広告収入で運営していくには厳しい数値だが、新聞社系のニュースサイトとして一定の存在感は持っていたように思う。
 ただ、日々「編集局から」というコーナーで3社それぞれの紙面の見所を紹介していたり、「新聞案内人」といった独自コラムを用意したり、3社の論説・編集委員による座談会を定期的に実施するなど、結構運用には人手をかけているような印象があった。「協力」の範囲内で人手を出しコストをかけて運用していくには負担が見合わなかったようだ。3社による印刷や販売網、記事使用の共用化といった主にコスト削減を目的としたリアルビジネス上の連携は着実に進んでいるので、インターネット上でのアドバルーン的な連携はもう必要がなくなったということなのだろうか。
 なお、「あらたにす」の名前はFacebookのページに引き継がれている。「あらたにす 学生は言いたい!」というページがそれで、「学生がつくる、学生のためのニュース・ディベート・プロジェクト」と銘打ち、「学生編集長」という肩書きの、ジャーナリズムに関心がありそうな学生が運営に携わっている。編集長なのに複数いるのには少し違和感を感じた。
[該当ページ]⇒ あらたにす|Facebook
 主なコンテンツとしては、「ウォール」で学生編集長が3社の紙面やニュースサイト掲載された記事の中からピックアップし、背景や自身の考えも述べた上で「学生の皆さんはどう思いますか?」と投げかけ、議論を促している。学生編集長がモデレータ(司会者)となって、Facebookを使う学生と日々のニュースを素材に議論をしていくというスタイルだ。このほかに学生同士で議論された内容が「ノート」に上がっている。また、大学生がターゲットということで、各社の採用活動に関連するページへのリンク集も設けられている。
 このFacebookを利用するやり方ならば、サイト構築・維持のコストもかからないし、運営するスタッフも学生なのでそれほどお金もかからないだろう。各社にとってはマスコミ志望の学生の囲い込みとしても利用できそうだし、紙を読んでもらえない学生に対して少しでも自分たちのニュースをリーチさせる目的にもかなう。どのような時事問題のテーマに学生は興味を示すのかということを探ることもできるだろう。
 実名が基本となっているFacebookだけに、これまで読者投稿などで実名主義を貫いてきた新聞社のスタンスと合うところもありそうだ。いろんな意味で賢いやり方だと素直に思った。最近、記者の実名ツイッターを積極的に推進し、ソーシャルメディアの活用に熱心な朝日の姿勢が影響しているのだろうか。
 さて、様々な意図がうごめいていそうな今回の「あらたにす終了」だが、せっかくFacebook上でその名前を引き継いだのに、あのシュールな終了ページから告知はおろかリンクすら貼られていないというのはいかがなものか。日々更新している学生スタッフのためにも、後継コンテンツであることをきちんと宣言しておくべきではないだろうか。