edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

産経とヤフー、名誉毀損で敗訴確定 ネット媒体の掲載責任確定へ

 忘れないうちにメモ。

 いわゆる「ロス疑惑」で無罪判決が確定した三浦和義氏(故人)の遺族が、検索大手「ヤフー」のニュースサイトに載った写真で精神的苦痛を受けたとして慰謝料を求めた訴訟で、ヤフーが20日、東京高裁への控訴を取り下げた。写真を配信した産経新聞社も同日、取り下げた。ヤフーと産経新聞社に、連帯して66万円を支払うよう命じた一審・東京地裁判決が確定した。
 昨年6月の一審判決は、報道機関だけでなく、記事や写真を転載するニュースサイトの運営会社側にも賠償責任を認める厳しい判断を示していた。
朝日新聞デジタル:ヤフー、名誉毀損で敗訴確定 三浦和義氏の写真転載で

 詳しい流れは2010年4月の提訴時のエントリ(三浦和義氏の妻が名誉棄損で産経新聞と配信先のヤフーを提訴)と昨年6月のエントリ(産経とヤフーに賠償命令 「手錠姿」写真の掲載で媒体側の責任認定)を参考にしていただくとして、記事や写真を提供する報道機関だけでなく、配信を受けたウェブサイトの運営会社にも名誉毀損の賠償責任を認めた東京地裁の一審判決が確定することになった。
[産経の報道]⇒ページが見つかりません - MSN産経ニュース
 ヤフー側が一審で主張してきた「記事や写真の作成に関わっておらず、内容をすべてチェックするのは不可能」を取り下げ、「訴訟で争いを続けるより、サービスをよいものにしていくため労力を使った方がいいと考えた」とのコメントを出し、実質的な方針転換を表明したことは、これまで事実上ルールや慣習が存在してこなかったウェブメディアでの報道について、一定の指針を与えることになるであろう。
 一審判決時に原告側の弘中淳一郎弁護士(三浦和義氏をはじめ村木厚子さんや小沢一郎氏など著名人の弁護を務めることが多い)が「若い人を中心にデジタルニュースが主流となる中、ヤフーの賠償責任を認めた意義は大きい」とコメントした通り、若い世代を中心にニュースを得る手段として紙の新聞よりもインターネットの方が主流になりつつある中、媒体側の「ウチは載せただけであり、責任はない」という論理に一定の歯止めがかかったともいえる。
 今回の控訴取り下げを受け、早速弘中弁護士はヤフーに対して人格権への配慮の申し入れを行っている。個人的にはそもそもの原因となった写真を配信した産経新聞社にも申し入れをした方がいいんじゃないかと思うけどね。
[参考]⇒敗訴確定のヤフー側に申し入れ ロス疑惑写真掲載で弁護士 :日本経済新聞
 無料で運営するウェブ上のニュースサイトにとってみれば、わざわざ訴訟リスクを負うくらいなら、事件や裁判関係のニュースには力を入れず、代わりによりアクセスが稼げる芸能・スポーツニュースに注力するという方針に変更することも考えられなくはない。事実、名著「ウェブで儲ける人と損する人の法則」で知られる中川淳一郎氏はネットニュースの運営について「お手軽にPVを稼げる」「クレーム対応や訴訟リスクを徹底的に避ける」の二つが重要と言い切っている。
 今回の方針転換によって、ヤフーニュースの今後の記事掲載ポリシーに影響が出るようなことがあってほしくはない。正面から向き合い、“マスメディア”の一翼を担うための責任を果たしていくことで、インターネットが社会インフラとして成熟していくことにつながっていくであろうから。