edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

渡辺会長「原発は推進せよ。読売は磐石、何をやっても必ず勝つ」

 1月5日に開かれた読売新聞社の2012年賀詞交換会ナベツネこと渡辺恒雄グループ本社会長・主筆でのあいさつが相変わらずふるっている。「原発は今後も推進して輸出せよ、混迷した政治を誘導できるのは新聞だけ、経営は磐石で何も心配はいらない」と強弁。その強烈な個性は85歳となった今でも衰えていない。1月20日付新聞之新聞に掲載されたあいさつ全文より、適宜ツッコミを入れながら紹介。

原発は今後も推進し海外へ輸出せよ

 このまま電力供給量の3割を受け持つ原子力発電が消えたら、日本の産業空洞化は進み、景気が悪くなり、失業者、倒産が続出することは間違いありません。野田総理は去年、原子力発電について、安全性を確認したものから再稼動していくと約束しました。僕は彼を信じてますし、支持しています。
 原発というのは日本だけがやめる、ドイツだけがやめるということで解決するのでしょうか。日本中の原発をやめたところで、中国がこれから200基造るといっています。中国の技術レベルは去年の新幹線事故でわかるように、あてになりません。水がないと原発は使えないので、おそらく沿海部に造るでしょう。その原発で故障が起きたら、放射能が日本に飛んできます。日本を原発から本当に守るなら、絶対に安全に近い原発を造って中国に輸出し、「これを使ってくれ」と言ったほうが利口ではないでしょうか。
 福島第一原発の事故の真相は、地震より津波が原因であり、津波に対する人為的なミス、人災の面が非常に強いということがわかってきました。人災であれば、人間の頭脳、技術で防ぎ、予防し、安全性を極度に高めることができるはずです。原発の安全性を高めて、「日本の原発を買いたい」と言っているベトナム、トルコ、その他の国に輸出する。日本には新幹線と原発以外、輸出できる大きなインフラはもはやありません。

 原発推進をこれほど明確に表明する人は、日本で彼以外にはいないのではないだろうか。脱原発のデモの人たちが不買運動を展開したり、読売新聞社にデモをかけないのが不思議なくらいである。原発のために今なお避難先の生活を強いられたり、日常生活に様々な影響を受けている販売所の人々もいるだろうが、そういう人を前にしたとしても言い切れるくらいの迫力を感じる。
 ただ一方で、日本と世界のエネルギーの将来に対して極めて明快なメッセージとビジョンを発信していることも事実。政府や国会議員、東京電力を批判するだけで、実効性のある案を出せないままでは、いつまでたっても「脱原発」はマイノリティーの域を出ないだろう。

世論を誘導できるのは読売新聞だけ

 中曽根内閣が売上税5%の導入を検討した時、他の全新聞が絶対反対する中、読売新聞だけが賛成しました。中曽根総理(当時)は「コメは非課税です。新聞は人間の頭脳にとってのコメです。よって非課税にします」と約束しました。あのとき導入されてたら、今頃15%になっているかもしれません。そのかわり、かなりの生活必需品が軽減税率を受け、新聞は非課税になっているはずです。
 他の新聞も少しずつ反省して、今度は消費税もTPPも全国紙はみな賛成に回って、現実主義的になってきました。しかし、いつも変わらず、世論全体を引っ張っているのは読売新聞です。日本の混迷した政治をうまく誘導していく能力があるのは新聞しかありません。新聞がしっかりするためには、「読売1000万部」を維持しなければなりません。震災で7万部減り、1000万部を割りました。しかし、一時的にでも年末に1000万部を回復しました。

 ちょうど今TBS系列で放送されている日曜ドラマ「運命の人」で、本木雅弘演じる主人公・弓成のライバルとして登場する大森南朋演じる山部は、現役記者時代の渡辺会長をモデルにしていると言われている。ドラマの中では政治家にうまく取り入り、モックンとは別のやり方で日本を変えていこうという姿が描かれるが、まさにそれを体現しているような感じだ。「世論を引っ張るのは読売」とは彼でなければ言えない自信とプライドの表れだろう。
[参考]⇒消費増税は「必要」63%…読売世論調査:YOMIURI ONLINE(読売新聞)
 部数については先日紹介したとおり、11月のABC部数で1000万部を回復したものの、12月には再び割りこんだ。一応の面子は保てたのだろうが、この先地道に部数を積み上げていくのは相当厳しいだろう。考えられるのは、昨年11月のように年に1カ月だけでも1000万部をクリアすることで数字を保っていくことだろうが、果たしてどうなるか。

何をやっても必ず勝つ、いかなる戦にも勝つ

 それぞれの新聞社の資産状況を調べると、読売の経営があらゆる指標からみて最も健全な経営をしています。読売の収入は、6割が販売収入、2割が広告収入、残る2割が巨人軍をはじめとした事業収入や不動産のテナント収入です。広告収入はこの不況で約半分に減りましたが、減った分は経営合理化や近代化、IT化によって吸収して、黒字経営、黒字決算を維持することは困難ではありません。読売の販売は極めて健全で、これが読売の基本的な強さです。ほかに、不動産や事業収入のそれぞれの部門、部局で一生懸命努力し、創意工夫を凝らし、コツコツと稼いでいます。
 とにかく読売新聞は磐石です。何も心配はありません。何をやっても必ず勝ちます。いかなる戦にでも勝ちます。その自信があります。私も85歳ですが、後継者はいくらでもいます。みなさんが頑張れば磐石です。あとを頑張ってくれそうな人がたくさんいるから心配は一つもしていません。元気でやりましょう。

 グループ社員を鼓舞するのが目的のあいさつとはいえ、「何をやっても必ず勝つ」と言い切れるトップはなかなかいないのではないだろうか。現場の社員や販売店主がこれを聞いて共感できるかどうかは甚だ疑問だが…。
 あいさつの最後で自分の後についても言及したことで、引退のことも視野に入っていそうな様子だ。昨年7月には「新社屋の完成する年(2014年)までは持ちこたえる」と表明している。2年後には言葉通り引退するのか、それとも死ぬまで代表権を手放さず、94歳まで読売の最高実力者として君臨した務台光雄氏のような道を進むのか、渡辺会長はどちらの道を選ぶのだろう。