edgefirstのブログ

国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

朝日・秋山社長「電子版有料会員は3万、asahi.comとは一体化しない」


 このところ朝日新聞デジタルに関する話題ばかり拾ってしまっているが、業界紙・文化通信の10月10日号に、日本新聞協会の会長に就任した朝日新聞社の秋山耿太郎社長のインタビュー記事が載っていた。5月に創刊した朝日新聞電子版について、現時点での会員数や課題などについて語っている。適宜感想を挟みながら発言をメモ。

 

 朝日新聞デジタルは8月1日から課金を開始しましたが、現在の有料会員数はおよそ3万人です。本紙プラスデジタル、そしてデジタル単体の割合は7対3ほど。7割より少し多いかもしれません。1年ほどで10万人獲得が目標ですが、だんだん壁も見えてきました。最も大きな壁は、新聞販売店が読者にデジタルを勧めたとき、「無料の『アサヒ・コム』で十分ではないか」と言われること。それなのになぜプラス1000円出すのかと。そういった意見が意外と多いんです。これをどう調整していくか。無料の「アサヒ・コム」の発信を制限したら、見ていた人がすべてデジタルの有料会員になってくれるかと言ったら、そうとも限らないでしょう。

 先月の月刊誌FACTAでは「有料会員は2万5千人」という数字が載ったが、それよりは若干増えている。とはいえ、創刊から半年近くで目標数の3割というのは険しい道のりではあるだろう。「無料のアサヒコムで十分ではないか」という読者の声は至極もっともな話であり、それを「意外と多い」と言ってしまうのはちょっとアレだが、それに対する対応策についてはまだ試行錯誤中のようだ。

 スタート時点ではiPadiPhoneなどの電子端末で閲覧する人が多いとの想定でしたが、現実にはパソコンで見ている人が6割以上と多い。そのため、パソコン、タブレット端末、スマートフォンそれぞれの特性と、それに見合ったコンテンツを考える必要があります。

 この「ニュースの閲覧はやはりPCからが中心」という部分は結構重要な指摘。AndroidiPhoneiPadにそれぞれアプリを用意したものの、パソコンで見ている人の方が多いということは、職場からの閲覧が多いのだろうかとか、若者世代より中高年層の方が多いのではといった推測が思い浮かぶ。阿部寛が出演するCMでは、家庭で電子版を読めることを熱心にアピールしているが、自分の身の回りや日常生活を考えて、家庭で能動的にデジタル版を見ようというシチュエーションは、現時点ではなかなか考えづらい。

――日経のように元々のニュースサイトと電子版を一緒にするかたちはとらないということですか?
 どのような形がふさわしいのかは、いま社内で議論しているところです。基本的には日経型でない方向がいいのではないかという意見を軸に議論を続けています。内情を言えば、私たちは「アサヒ・コム」をはじめ、多様なデジタル商品のビジネスモデルをすでに持っていたので、それらを組み合わせる形で、朝日新聞デジタルを比較的費用をかけずに有料課金の実験モデルにこぎつけたのです。

 このあたりがFACTAに揶揄された「アサヒ・コムの広告収入を無視できず、システム統合のコストをケチった」という話につながるのであろうか。とはいえ、前段の話にあったように無料のアサヒコムを閉じればデジタル版にユーザーが移るかといえばそうではなく、毎日や読売にトラフィックが流れ、マスメディアとしての情報発信力も落ちていくだけの話だろう。社長が「有料課金の実験モデル」と言ってしまう点で日経とは電子版に対する覚悟が違うのかな、という印象を受けた。

(追記2011/10/26) 有料会員数は3万7千

 2011年10月18日に京都で行われた新聞大会のパネルディスカッションで、現在の有料会員数は3万7000人であることが秋山社長から報告された。電子版でも学割を適用したり、大がかりなプレゼントキャンペーンを行うなど、様々な施策も影響しているのだろうが、短期間で約7000人増とは突然ムチが入ったような感じすらする。