藤代さんの実体験が詰まったソーシャルメディア活用術「発信力の鍛え方」
ソーシャルメディアとジャーナリズムについて積極的な発言や活動をしている藤代裕之さん(ブログ「ガ島通信」)の新刊新書。はてなダイアリーの先輩ブロガーであり、同じくはてなでブログを開設している者として興味深く読むことができた。
一読して、読む人を多少選ぶ本かなという印象を持った。ブログ、ツイッター、フェイスブックなどのソーシャルメディアを、単にリアル友達とのおしゃべり程度にしか使わないユーザーにはそれほど興味を持たれないかもしれない。ただ、ソーシャルメディアの力を実際の仕事や活動に生かしていこうという人であれば、非常に頼りになる本といえるだろう。
「鍛え方」とタイトルに銘打つだけあって、情報の効率的な収集方法や整理方法といった「収集」に関するものから、発信する情報をどう「より伝わる」形で表現していくか、といったノウハウが詰め込まれてる。また、「トラブルに対処するには」という項目については、おしゃべり程度にしか利用しない人も読んで損はない。ソーシャルメディアに情報を発信する時に注意したい3つのポイントを挙げている。
- 友達や家族の前で言えないようなことは書かない
- 公開する前に音読してみる
- 怒っているときやイライラしているとき、酔っているときはやめる
さらに一歩進んだ使い方として、ソーシャルメディアを通して知り合った人とリアルにつながっていくためにはどうしたらいいかということも解説している。セミナーや勉強会への参加から、運営を手伝ったり、自分で勉強会を主催するまでのステップは参加者としてではく、運営者としての視点も盛り込まれており具体的でわかりやすい。
- 作者: 藤代裕之
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2011/09/17
- メディア: 新書
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読み終えて思ったのは、この本に書いてあることはすべて藤代さんの実体験から会得したことではないかということだ。2004年と早い段階から新聞記者としてブログを始め、その後退職してgooニュースでデスクを務める傍ら大学講師として次世代のジャーナリスト教育に力を注ぐまでには、様々な人との出会いがあったことが記されている。また、東日本大震災時にはいち早くソーシャルメディアを活用したボランティア情報基盤を立ち上げるなど、情報発信をいかに行動に結びつけるかを実践している。
本書の中に、「ソーシャルメディアでの情報発信は、一人で走り始めた男の周囲をいつしか人が取り巻き、伴走し始めるという『フォレスト・ガンプ』の有名なシーンに似ている」というくだりがある。誰が読んでいるかわからない孤独な作業の中で、それでも伝えたい思いを持ち続けたからこそ、藤代さんは後に続く人たちを大勢の人たちを生み出せたのだろう。