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河北新報、後世に残す記録集「東日本大震災全記録 被災地からの報告」刊行

 河北新報社は8月5日、『東日本大震災全記録 被災地からの報告』を初版5万部で発行した。新聞紙面に掲載した記事や写真、データなどを地域やテーマ別に再編集した。伊集院静氏が巻頭言を寄せている。
 同社が4月8日に観光した写真集『巨大津波が襲った 3・11大震災』はこれまでに10刷45万部と、書籍扱いの震災写真集としては群を抜いた売れ行きになっているが、当初から夏には今後に残る記録集を刊行すると企画を立てていた。
(2011年8月22日付文化通信より)

 通常は3000部から4000部程度という販売地域を限定した地方新聞社の出版物としては、異例の45万部という売れ行きを見せた河北新報社の「巨大津波が襲った 3・11大震災」に続き、震災からの4カ月の記録をまとめた「東日本大震災全記録 被災地からの報告」が8月5日に刊行された。
 前作は「発生から10日間の記録」と銘打たれていたように、スピードを重視し発生から1カ月も経たない4月8日に発売されたが、今作は震災後の被災地の経過を写真で追ったり、震災の被害や影響を地域別・テーマ別に再編集するなど記録集としての役割を重視した構成となっている。立ち読みは以下のリンクから。
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 一読して気づくのは読者など地元の人々から提供された写真の多さ。津波襲来の瞬間を屋上から撮影した写真や住宅に迫る津波、大津波警報を受け避難する人々など、文字通り着の身着のまま逃げる中撮影したようなリアルな写真も多数収録されている。地域に根ざす新聞社だけあって、記者だけでなく地元の声や記録を少しでも集め、後世に残していこうという意識が感じられる。
 同じ地点の震災前、直後、3カ月経過後の写真を見開きで並べ、ガレキが片付いていく様子がよくわかるページからは、失われたものの大きさと復興に向けて立ち上がる人々の意志が強く伝わってくる。
 また、宮城・岩手・福島の3県について、自治体単位で7月時点の被害状況を図表と文章でまとめており、それぞれの地域がどのような被害にあったのか概要をつかむこともできる。それぞれの市町村について新聞記事などからエピソードが掲載され、この大震災がいかに広い範囲に影響をもたらしたかに改めて気づかされる。

東日本大震災全記録―被災地からの報告

東日本大震災全記録―被災地からの報告


 惜しむらくは、販売ルートを河北新報の新聞販売店と大手取次の東北支店に限り、全国ルートに十分乗せていないことか。そのためか東北地方以外の書店ではなかなか入荷がなかったり、アマゾンでもあまり入荷されず、マーケットプレイスでないと入手できない状態が続いていた(bk1楽天ブックスでも購入可能)。震災発生から4カ月という一定期間を総括した本としての意味は大きく、より多くの人に読まれるようになってほしい。