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日経が黒字回復 経費削減と電子版が貢献、増益額100億超

 日本経済新聞社は8日、第139期(平成22年1月〜12月)決算を発表した。連結売上高は5期連続の減収となる3035億7400万円=前期比3.8%減、単体売上高は4期ぶりの増収となる1774億6800万円=同0.2%増となり、前期で連結、単体ともに2桁を超えた減収から大きく改善した。経費面では新社屋取得に伴う臨時的な支出がなくなったことや、減収幅を大きく上回る売上原価や販売費及び一般管理費の削減もあって、前期の連結・単体決算の全利益赤字から1期で黒字に転換した。期末の新聞部数は日経本紙が309万部、産業16万部、MJ26万部、ヴェリタス6万部。電子版の有料会員数は11万〜12万人。無料を含めた登録会員数は70万人を超える規模。
 (ジャーナリスト新聞 2012年3月14日付より)

 日本経済新聞社の平成22年決算が3月8日に発表された。前年は初の赤字決算となったことが業界では大きな話題になったが、1期で黒字転換を果たした。連結と単体決算の損益計算書の抜粋は以下の通り。

科目 金額(百万円) 前年比
売上高 177,468 100.21%
(連結売上高) (303,474) (96.25%)
売上原価 110,103 93.90%
(連結売上原価) (196,450) (92.56%)
売上総利益 67,365 112.56%
(連結売上総利益 (107,123) (103.83%)
販売費及び一般管理費 61,479 91.69%
(連結販管費 (96,086) (89.83%)
営業利益 5,885 +130億
(連結営業利益) (11,037) (+148億)
経常利益 6,874 +130億
(連結経常利益) (11,774) (+154億)
当期純利益 5,519 +69億
(連結当期純利益 (6,253) (+194億)

 単体売上高がわずかながら4期ぶりにプラスになった要因としては、以下の3点が挙げられる。

  • 電子版創刊により、デジタル事業収入が76.4%の増加
  • オルセー美術館展」好評により、事業収入が16.4%増加
  • 広告収入の減少幅が2%と、前期の3割減少に比べ大幅に縮小

 その他、発表から個人的に気になった点は以下の通り。

  • 2010年12月末時点の電子版有料会員数は11万〜12万
  • 電子版が好調な一方、日経テレコンやNEEDSなどのデータベース関連の収入は前年比7.8%減
  • 広告については、金融、建設・不動産、運輸・観光など12業種で前年を上回る
  • 2010年中の設備投資額は支払いベースで52億円、発注ベースで21億円。ほとんどが電子版関連の設備
  • 自己資本比率(単体)は前期比2.4%増の61.1%

 また、新社屋建設に伴う支出がなくなったことが販管費の減少に大きく影響しているようだ。2009年にオープンした大手町の新社屋はまるでアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」でいう「ネルフ本部」の内部のようなハイテクビルであり、前年の決算にも相当大きなインパクトを与えていたのだろう。材料費の減などによる売上原価71億減と、販管費の55億減を合わせたマイナスが、100億を越える増益の大きな要因となっている。
 「V字回復」と言って良いのかどうかはわからないが、損益計算書上は大きく改善している。金額的には売上高の増加よりも、新社屋建設負担がなくなったことや、経費節減といった費用削減の寄与割合が大きい。とは言え、「節約」という防戦一方ではなく、新しいビジネス領域に踏み込んだ電子版が旗印となって、各方面にプラスの影響を与えていることは間違いないだろう。
 今期は大震災の影響で広告収入などに大きなマイナスが予想されるが、2010年は日経が新しいスタートを切った年として記憶されるようになるのではないだろうか。