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国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

読売・内山社長「私は1000万部体制にこだわり続ける」

 全国の新聞社が部数減に苦しむ中、朝刊1000万部体制を堅持する読売新聞であるが、1月1日の業界紙・ジャーナリスト新聞のインタビューで、読売新聞の内山社長が1000万部体制について触れている。インタビュアーの、読売の1000万部堅持体制が業界全体に負担を与えているのではないか、という質問に対する答え。「目標がなければ商売にならない」というある意味これ以上なく明快な論旨である。
 なお、内山社長は日本新聞協会の会長も務めており、読売の販売面を取り仕切り、今なお紙面の総責任者である渡邉恒雄グループ本社会長・主筆の後継者一番手と言われる人物。84歳の会長の次が75歳というのも考えてみればすごい話。

内山 私は朝刊の1000万部体制にこだわり続けますよ。読売新聞が朝刊で1000万部を維持することが、業界の乱売の元になるとか、正常化を阻害しているとは全く思っていません。
 なぜかといいますと、我々は1100万部にするとは言っていません。1000万部を堅持するのであって、目標も設定しないで、「良い新聞だから」と言っても、一体誰が売るのでしょうか。ですから目標は立てなければなりません。1000万部を維持することを目標にしながら、販売店も新聞を売れば商売になるのです。(中略)
 繰り返しになりますが、1000万部台の維持が業界の過当な競争を招いているとは全く思っていません。ただ、販売店の経営を考えたら、新聞をきちんと売っていただいて、儲けていただきたい。折込収入をあてにしている販売店主は、ごくごく一部であり、そのような経営者は破綻を来たしています。地道に経営して来た人が結局は勝利しています。そして、これは今後も変わらないと思います。
 (2011年1月1日付けジャーナリスト新聞より)

 これに対し、朝日新聞の秋山社長の部数に対する見解はこちら。

秋山 人口の減少と高齢化、若者の新聞離れなどもあり、部数が増える時代ではなくなりました。販売正常化と合わせて、過剰な予備紙を削っていく決断をして、西部本社、大阪本社から始めています。その結果、10年2月からは800万部を割っています。
 西部と大阪ではもう少し、整理が進むでしょう。それから名古屋、東北、北海道と続き、最終的には関東も調整します。読売新聞は1000万部を維持していますが、朝日はできる限り販売現場の実態に合わせた販売政策にしようという考え方です。以前は読売も朝日も、それぞれ1000万部堅持、800万部堅持でしたが、ここは歩みが分かれるところです。
 どちらが正しいかはまだ結論が出ませんが、少し部数を整理して販売店が経営基盤を強化して元気になり「よし、またがんばるぞ」と言っていただけるようになれば正しかったことになります。その一方で削り始めると「ずるずる減っていく」という見方もありますので、そうなれば、間違っていたことになります。
 (2011年1月1日付け新聞情報より)

 「どちらが正しいかは結論が出ない」というのは全くもってその通り。朝日の姿勢を弱気ととる人も多いだろうし、読売のやり方が過重なノルマ主義になっていると捉える人もいるだろう。
 ここ数年、年に1回新聞・テレビ特集を行っている週刊ダイヤモンドだが、2010年1月15日号では、「新聞・テレビ 勝者なき消耗戦」と題して、マスメディア業界の苦闘を取り上げていた。その中で印象的だったのが、「電子版発行を進めているがなかなか成果が上がらない朝日新聞に対し、読売は紙を中軸に据え1000万部の旗印を守り続けており明暗が分かれている」という部分。他にも早期退職やOB年金問題などで苦しむ朝日に比べ読売は強力な指導体制と確固たる戦略方針がある、というような読売ヨイショの傾向を少なからず感じた。
 現在の数字だけを見ればそういう書き方になるのかもしれないが、せっかく1年に1回の特集なのだから、もう少しフェアに扱ってもいいんじゃないかと思った。学校やホテルで無料でバラ撒いているとか、自社の新聞購入をこれまでのように販売店経由ではなく系列の即売会社からさせている(ダンピング目的?)とか、調べれば金看板の「1000万部堅持」を支える現場の苦しみがいくらでもあるだろうに。