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国内新聞社を中心としたマスメディア関連のウェブサイト巡回が趣味です。業界紙的なノリでトピックスをメモしていきます。

日経新聞電子版の有料会員が10万人を突破 社内からは不満の声も

 日本経済新聞社(代表取締役社長:喜多恒雄)が3月に創刊したインターネット媒体「日本経済新聞 電子版」(Web刊)の有料会員数が12月10日に10万人を超えました。最新ニュースや独自コラムなど記事の拡充に努めたほか、米アップルの携帯電話「iPhone(アイフォーン)」で電子版を手軽に閲覧できる専用アプリケーションを提供するなどサービスを強化したことが読者の拡大につながっています。12月10日からはシャープの電子書籍端末「GALAPAGOSガラパゴス)」への記事配信も開始しました。
「日本経済新聞 電子版」(Web刊)有料会員が10万人を突破

 3月23日の創刊以来、4月17日に6万人、7月7日に7万人と着実に有料会員数を積み上げてきた日本経済新聞電子版が、12月10日に有料会員数10万人超えたことが発表された。7月の時点で「年内に10万人突破の見込み」という日経幹部の発言があったが、その通りになった。創刊時の目標として、年内10万人ということがよく言われていたので、とりあえず目標を達成したことになる。
 10万人突破を記念して、プレゼントキャンペーンも行われている。広報犬「デンシバ」のオリジナルグッズの比率が高いような印象で、創刊時と比べプレゼントの質が下がっているような気がしないでもないが、まあこれは仕方ないのだろう。(⇒「電子版有料会員10万人突破 アンケートに答えて豪華プレゼントを手に入れよう!」
 一方、日経社内の声からは電子版の運用について、こんな不満の声も出ているようだ。

 日経社内の評判は必ずしもよくない。ある日経新聞のデスクが社内の現状をこう解説する。
 「とにかく会議が増えました。電子版のサービスが始まる前までは、夕刊シフトの場合、午前9時から午後2時までが忙しい時間帯で、それを過ぎると一息つくことができました。ところが、今は午後2時から『Web刊会議』と呼ばれる、電子版向けにどの記事を流すかなどを検討する会議が始まります。ちょうど息抜きの時間が会議に潰される格好です。また、朝6時半からの勤務があるなど24時間体制に近い形で電子版を管理するので、原稿をチェックするデスクや局次長は不規則なシフト勤務になってしまう。しかも勤務時間帯が毎日バラバラのケースもあり、体調を壊さないか心配です」
 その一方で、電子版の開始で労働負荷は高まるばかり。しかも、「電子版の開始は、日経の報道内容を強化し、本当に収益増に繋がっていくのでしょうか」と疑問を投げかける記者もいる。日経の中堅記者が次のように漏らす。
 「ニュースをクリックすれば関連記事が読めるサービスのため、過去の記事から関連しそうな内容のものを探しては、ひたすら画面にコピーして貼り付けるような仕事に異動させられた人もいる。それが本当に新聞記者のする仕事なのか」
新聞記者たちの不安を聞きに行く【第二回】 日経新聞記者たちの小さな怒り

 「過去の記事から関連しそうな内容のものを探しては、ひたすら画面にコピーして貼り付けるような仕事」こそ、インターネットの特性を生かした取り組みだとは思うが、確かにこれまで「記者一筋」を誇りにしてきた人にとっては過去のスクラップをめくってコピペするだけのいわゆる「レベルの低い」仕事に思えるのだろう。
 しかし、ネット上で圧倒的なアクセスを集めるヤフートピックスは、あるニュースについての関連情報を膨大な情報が溢れるインターネットから人の手で探してきて、記事と一緒に貼り付けることで利用者の理解を助けるということをほぼ24時間体制で行っている。そういったスタイルがネットメディアに適しており、多くの人の支持を受けていることは確か。記者というより編集者としての仕事に近いが、このあたりの感覚が「異動させられた人」にはついていけないのではないだろうか。
 日経の喜多社長は電子版の発表時に「今始めなければ、10年後の成功はない」ということを述べていた。初年度目標の達成には無理をした部分もあるのだろうが、会社を明確に変えようという意識でやっている様子は伺える。
 電子版業務による労働負荷の拡大については、確かに厳しい面はあるのだろう。これまでの1日2回と決まっていた締め切りがなくなり、海外市場をフォローするためには朝早くからの勤務も必要になる。日経もいつまで夕刊を出すのかな、と個人的には思う。例えば電子版で見られる夕刊紙面イメージを見ると、株価欄は「午後1時15分」のものであり終値ではなく、現代においてあまり意味ある数字とは思えない。
 2010年のABC部数を見ると、日経夕刊は全国で160万ほど。統合版地区があることを考えるとセット率は結構高く、夕刊の廃止は簡単なことではないだろうが、業態変化と労働負荷を考えるならば、検討の一つには入っているのではないだろうか。