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デイリースポーツ電子版は400部足らず 販売店反発でPR控える

 2月からスタートし、3月から月額1890円の有料課金を開始したデイリースポーツの電子版。5月7日からはiPhoneでの一部売りに対応するなどの動きを見せていたが、電子版の部数は400部足らずであることが朝日新聞夕刊の連載企画「メディア激変」で明らかになった。

 1面を連日飾っていたプロ野球の人気低下、読者の高齢化、ネットやケータイの普及、スポーツ紙の退潮の原因は様々に指摘されている。デイリースポーツでもここ数年、輸送費がかかるため、東北地方から新潟県から撤退した。苦境を打ち破る奥の手が電子版だった。しかし、販売所からは「紙の売り上げに影響を与えかねない電子版は困る」と反発があった。このため紙面では電子版のPRを控えている。
 電子版の部数は現在、400部足らず。3月から課金したあとは伸び悩んでいる。販売の空白地域からの申し込みが半数ほど。iPhoneへの配信を、1部115円で5月からは国内でも始めた。
asahi.com(朝日新聞社):〈メディア激変80〉逆境に立ち向かう新聞―14 スポーツ紙に押し寄せる波 - メディア激変

 記事中ではデイリーを発行する神戸新聞社常務の話として、「人件費を除けば、経費があまりかからない電子版は300部でも黒字になる」という発言も紹介されている。単純計算で1890円×300部で56万7千円。出来上がった紙面を、電子版として配信するためのシステムや、通信・決済インフラのコストはこれより少ないということなのだろう。
 記事中ではiPhone版一部売りの販売部数については具体的な数字がなかったが、どうなのだろうか。
 
 デイリーiPhone版を見たとき便利だなと思ったのは、iPhoneアプリ自体は無料でダウンロードさせ、1カ月1890円で契約したPC版でのユーザーはそのままIDを入力すればよく、一部115円の当日分売りを買いたい場合のみApp Storeの決済を利用しているということ。独自の会員管理システムとApp Storeの決済を併用するやり方もあるのかと感心した。電子新聞とは「自分の一番利用したいデバイスで利用できること」というのが一つの定義となりえるのではないか、と思った記憶がある。
 販売店からの反発でPRが控えめになったという記述も興味深い。確かに、電子版が売れたとしても販売店には1銭も入ってこないのであれば、これまで新聞社と一蓮托生で歩んできた販売店としては心中穏やかではないのだろう。紙面販売を取りやめた東北地方のユーザーを対象に効果的にPRできる手法があれば、実験的に取り組んでみてもいいような気がする。
 にしても、たかだか400部足らずの電子版に反発があるなら、その数万〜数十万倍のユーザーにリーチするヤフーやライブドアのようなポータルのニュースサイトへのニュース配信はどうなんだという気もする。「紙面」という完成された商品をデジタル化で販売するのではなく、1つ1つ記事単位ということであれば、販売側にとっては心理的な抵抗は少ないのかもしれないが、それはあくまで売り手側の視点であって、記事を「コンテンツ」として消費する若い世代のユーザーにとってはあまり関係がないのではないか。