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日経新聞電子版は月4000円で3月創刊か 地方紙への課金システム提供も視野

 ブログ「まつにおまかせ」の記事で、FACTA2月号に日本経済新聞電子版の価格が載ってるということを知ったので、早速現物を読みに行ってきた。オンライン版では定期購読しないと読めない記事で、「『電子新聞』に賭ける日経社長の成長戦略」という見出しが付いている。
 FACTA記事のネタ元は1月5日の日経・喜多社長の全社部長会での発言を下敷きにしているようだが、なかなか興味深い内容が多かったので、真偽は不確かであるが概要をメモ。
<日経の経営状況について>

  • 09年の決算は営業赤字60億、税引き前損益も35億の赤字。
  • 販売収入は前年並みも、07年840億円→08年720億円→09年490億円と広告収入が激減。設備投資・交際費・ボーナス大幅カットなど180億円以上経費節減しても赤字回避できず。
  • 10年予算は09年実績比横ばいも、喜多社長は「(広告が)500億を下回ったらこの会社の黒字化は不可能」と厳命。

日本経済新聞電子版について>

  • 創刊は3月。
  • 購読料は電子版単独で月4000円、紙の新聞(月約4300円)と併読する場合はプラス1000円。
  • 「高望みはせず、まずは足場をじっくり固める」
  • 日経テレコンやQUICKなどのデジタル事業売上は現在約700億だが、電子版創刊で2012年には300億を上積みし1千億の大台に載せる。
  • 購読料だけでなく、読者一人ひとりの属性や好みに合わせた広告配信でネット広告の単価引き上げを狙う。

<地方紙・ブロック紙との連携について>

  • 日経電子版で構築した課金システムは、オープンプラットフォームとして地方紙やブロック紙への低廉なコストでの導入を視野。
  • 日経テレコン21」が事実上の新聞記事検索プラットフォームとなったと同様に、地方紙・ブロック紙との共存モデルの構築を狙う。

<その他>

  • 今後のデジタル事業への進出は報道や言論との親和性が高いものに絞っていく。
  • 「ここ5年が正念場。2015年ごろには新聞界の生き残りは勝負がつく」

 電子版単独で4000円は正直高いなあ、という印象で、年間割引でNHK受信料並みの2万5000円くらいなら個人的に契約しようと思ったが、どうも長期割引を導入する意図は当面ないらしい*1
 まあこれは「まつにおまかせ」さんが言うように「安すぎればプリント版から『過剰な乗り換え』が起きてしまう」という理由もあると思うし、値下げはいつでもできるがその逆は相当難しいということもあるだろう。逆に現在紙を取ってる人がプラス1000円というのはそれなりにお手ごろな価格なので、現在家で購読している読者や会社や事務所などで取っている人には嬉しいかもしれない。
 目新しいのは「地方紙・ブロック紙への課金システム提供を視野」というくだりだ。記事に課金をしたがっている社は多いように感じるが、自力で使いやすいシステムを開発する力を(技術的にもコスト的にも)持っている社はほとんどないだろうし*2日経テレコン21が商用の新聞記事データベースのデファクトスタンダードとなっているのは間違いないので、それと同じ感覚で利用できるのであれば乗ってくる社も多いのではないか。そうすると「47NEWS」で加盟地方紙を束ねている共同通信と目的がかぶってくるような気がするが。

*1:1月11日付文化通信 日経・喜多社長インタビューによる

*2:そういえば「メディアの興亡」でも日経のIBMCTSシステムは最終的には朝日と共同開発みたいになっていたね